ダンスを始めたきっかけは?

子供の頃からマイケル・ジャクソン、マドンナ、映画『フラッシュダンス』他、ダンス映画やミュージカルみたいなもの全般が好きで、高校生くらいからその種のダンスを自我流で始めました。

高校卒業後は、ヒップホップ、ジャズを本格的に習い始めて、同時にあらゆる舞台、それは芝居からダンスも種類にこだわらず多岐にわたりなんでも観に行っている間に、モダンダンスというものがあることを知りました。
そして、二十歳のころに習い始めて、そのまま自然とモダンへ移行してゆきました。モダンを始めたのは、年齢的には遅いほうでしょうね。




オランダをベースにヨーロッパのダンスシーンの第一線で、しかもフリーランスで11年という長い間活躍されてきた経歴をお持ちですが、そもそもなぜオランダという国を選んだのでしょうか?
当時、オランダのモダンというのは、モダンバレエでNDTが知られていましたが、その他となると、日本ではあまり紹介されていなかったように思いますが?


はい、そうですね。
もちろんNDTを目指して向こうへ行ったわけではありません(笑)。

単純に『消去法』でした。
当時のダンスシーンの主流はヨーロッパ、際立っていたのがフランス、ドイツ、ベルギー辺りでしょうか。そこで漠然としたヨーロッパへのあこがれがありました。
が、ダンスの技術も微々たるものでさらには外国語のひとつもしゃべることのできなかったわたしには、あちらでオーディション周りをしながら仕事を採るなんてことはまず無理だろうと思い、留学を考えたのです。
 あとは消去法です。
 外国語でわずかながら馴染みがあったのが英語だったので、授業が英語で行われるところ、あとは学費や生活費がかからないところ・・・と探しているうちに引っかかったのが、年間の学費が約20万円のロッテルダムダンスアカデミー(現コダーツ)だったのです。というか、そこしかなかったのです。
当時のオランダのモダンダンスと言えば、わたしもNDTしか知らなかったわけですが、『ともかくヨーロッパに行けば何とかなる』というかなり安易な考えで乗り込みました。
が、ふたを開けてみるとオランダは、ヨーロッパやアメリカなどモダンダンスの盛んな諸地域出身のダンサーの多くが目指して来る土地だということを知り驚きました。
ロッテルダムダンスアカデミーも当時はヨーロッパのなかでもレベルは群を抜いていて(今となってみるとどうしてわたしに入学許可が下りたのか不思議なのですが)あの学校に入れたのはまさにラッキーでした。
オランダは、振付家やダンサーが多国籍にわたり、ダンスの種類ももちろん多岐に渡り、わたしにはもってこいの土地だったので、そのまま居座ってしまいました。




ヨーロッパで活動しているときに、印象に残っていることは何ですか?

とあるプロダクションで怪我人が出て代役というお仕事が入ってきたことがあるのですが、それは確か4、5日ですべてを覚えて舞台に立たなければならなかったんですけど、その作品がオランダ国内で爆発的なヒットになりましてね、振付家がわたしを気に入ってくださって、結局その後数年間、オリジナルキャストを差し置いて、わたしがツアーメンバーになったということがありました。あれは正直、ラッキーでした。
あと印象に残っているというか・・・わたしはたいがい、発狂して踊り狂うといったタイプの役が多かったですね(笑)



では次に、富野さんの演出/振付作に関する質問です。
富野さんの作品は、全般的に踊りの量がたいへん多い印象があるのと同時に、具体的なストーリー、いわゆる芝居としての筋がはっきりしていることが多いですが、それはなぜでしょうか?


いわゆるモダンダンスと呼ばれているものを知らないお客さまへいかにしてダンスの良さを伝えられるだろうか、というすごく単純なところを考えてやり続けたらこうなりました(笑)



例えば、おもしろかったり、すごく素直に笑ってしまうシーンが多く出てきますね?

そうですね。 が、もちろん、ダンスが大前提にありますよ。
わたしが今までに作ってきた作品の全部が全部ではないのですが、そのときにお客さまにお見せしたいダンスを伝わりやすくしようとしたときに、具体的な物語、お芝居があると、まず全体的に親しみやすくなります。そこからダンスへスムーズに持ち込むことで、ダンスを知らない方でも抵抗なく観ていただけるかな、と。 モダンダンスは、なんとなく近寄りがたいものと考えている方も一般的には多いようなので。

そして芝居に関してですが、わたし自身「泣きの芝居」は好きですし、正直、そちらのほうが作りやすいのですが・・・お客さまはやっぱり笑えたほうが楽しいかな、と思いまして。
あっ、わたし、こう見えてけっこうなドラマクイーンなので、作品のよくあるパターンは、いくつか笑いのシーンがあって、が、気付くと泣けたりシュールになって、そして最後また笑って終わる、というのが多いですね(笑)




富野さんの作り出すダンスは、パワフルでダイナミックでカッコいい、という印象を受けることがよくあるのですが、ベースとなっているものは何でしょうか?

ありがとうございます。
実際に跳躍やフロアワークも多用しますし、力強い表現も多く、テンポも速いときはそうとうシャープです。
が、荒々しく雑に投げたり、あるいはいわゆる勢いで踊っているわけではなくて、実は絶対的なコントロールを意識しています。
コントロールというとひとつ語弊があるのですが、わたしの言うそれは、ガチガチに凝り固まったものではなく、呼吸をうまく使い、そして振付も例えばリバウンドを利用するなど、実はかなりラクに踊っているのです。
が、例えばこのリバウンドが、わたしの振付において、かなり勢いがついているときがよくあるので、それに耐えられるカラダを作り出すことが必要となります。
あと絶対的に言えるのは、全般を通して『ニュートラルに立つ』ということが鍵となります。それは芝居パートでもダンスパートでも、です。



では、普段のトレーニングは具体的に何をされていますか?
富野さんはたいへん筋肉質な身体を持っていらっしゃいますよね?


まず、うちのダンサーには基本、トレーニングとしてバレエを要求します。
モダンはリハーサルでいくらでもやるので、トレーニングのバレエはほぼ絶対的です。わたし自身のアップもバレエです。
そして、わたしは過去に大きな怪我をふたつやっていますので、カラダを守るために、ごくごく一般的な筋トレを専属のトレーナーさんのもとで行っています。




では最後に、今後の予定をお聞かせください。

10月と12月にも新作を発表する予定ですので、是非ともhttp://yukiotomino.comをチェックしてください!


富野さん、インタビューありがとうございました!




富野幸緒

97’より11年間、オランダへ移住。ロッテルダムダンスアカデミー(現コダーツ)ダンサーズ科ディプロマ取得。
以後、André Gingras、Club Guy & Roni、Iztok Kovac他、様々なツアーに参加、ヨーロッパダンスシーンの第一で活躍。各メディアより高い評価を受ける。
 シアターワークの傍ら、 ダンスフィルムにも携わり、主演作『Up at Down』(BBC放送協賛)等、カンヌ映画祭他、多数ノミネートおよび観客賞受賞。
 06’からセッションハウスレジデンスアーティストをはじめ、JCDN『踊りに行くぜ!』、東京シティ・バレエ団に振付けを提供するなど日本での活動を再開。11’『新人シリーズ9』にてオーディエンス賞受賞。
www.yukiotmino.com





富野幸緒 Yukio Tomino <新人シリーズ9オーディエンス賞>
『ストロングストイックストロベリーショー』
 会場/die pratze

7月26日(火19:30)、27日(水)15:00&19:30
構成・振付・映像・出演/富野幸緒 キャスト/野口千明、丹羽洋子、田中ノエル、小川圭子、中原百合香、他
97年より11年間オランダに移住。ロッテルダムダンスアカデミー卒。Andre Gingras、「Club Guy & Roni」他、様々なツアーに参加、ヨーロッパ各都市で公演。各メディアより高い評価を受ける。シアターワークの傍ら、多くのダンスフィルムにも携わり、主演作『Up at Down』等、カンヌ映画祭他、多数ノミネートおよび観客賞受賞。近年「東京シティ・バレエ団」に振付を提供するなど日本での活動を再開。(セッションハウスにてレギュラークラス開講中!)
問合せ/info@yukiotomino.com

「ダンスがみたい13」Website
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