interview no.95 マグネシウムリボン
 
    芝居のテーマはどこから拾ってくるんですか?

塚本健一 本当に色々です。たとえば、毎日通りがかっている謎の事務所がありまして。何の事務所だろうなと
いつも思っていたんですけど。ある時、たまたまその事務所の前を通りかかったら、ワゴン車が止まっていた。
それが掃除用具を満載した車で、あ、掃除屋だったんだと思った瞬間、掃除屋の芝居はどうだろうと思って、そ
のものずばり『掃除屋』という作品になったり。
あとは、Mixi日記でネタを投稿したら好評だったので、それを元に、人の顔を覚えるインストラクター・まゆみ
先生と、ダメサラリーマン達の芝居を考えました。2011年にd-倉庫さんで上演した『顔と名前』がそれです。し
りあがり寿さんの初期の作品みたいなものを目指したんですけど、いざ書いてみると違ったものになりました。
ワンアイディアで引っ張り切れないために色々な要素を入れた結果、いささかコンセプチュアルになりすぎた感
もありました。

    前回「顔と名前」の舞台作りについて、コンセプトは?

塚本 劇場の天井の高さや、見下ろす感じの客席を見て、セミナー会場のようなものを連想しました。それが作
品づくりにも影響しました。イベント会場っぽい感じだなあと。劇場から得たインスピレーションですね。


    今、演劇を続けている原動力はなんですか?

塚本 原動力によって続けている感じがしないですね。毎回へこたれながら、力をかき集めて必死にやりくりし
ています。台本書き始めが特にそうです。辛いです毎回。




    辛くても、作らせているのは何でしょうか?

塚本 作れなくなった時を想像すると恐ろしいので、まだ作れるのだということを確かめているのかもしれな
い。それだけじゃもちろんないですけど。で、本番が近くなってくると、もっとこうしたいという欲がどんどん
出てくる。とにかく、作るということを続けていかないと、自分の中の、こういうのを作りたいというビジョン
が、明確にならないんですね。

    作り続けることで、作る動機を探るようなものですか?

塚本 それはあると思います。もっとも、「やんなきゃ良かった」と思ったことは一度もないですけど、毎回必
ず「あー、やらなきゃなあ」というブルーな気持ちにはなります。


    演出をする時に心がけていることは?

塚本 稽古で見ている場面を映像的に記憶して、稽古中の芝居はあまり止めないです。止める時は割り切って細
かく止める。あと、一ヶ所から見ないで違う場所からシーンを見てみる。それから、指摘する時に否定の言葉を
使わない。




    メンバーのお二人にお聞きします。マグネシウムらしさとはどういうものだと思いますか?

芹川翔 特徴は「対話」ですね。笑わせるという仕掛けがあるわけじゃないんだけど、対話の中に色々な「おか
しみ」がありますね。その「おかしみ」は、単純に笑えるというのではなくて、視点を変えると哀しくもあるん
だけど、また別の視点にすると滑稽でおかしかったりするみたいな。そういうことが「対話」として行われる。
ギャグというものがそもそもないですね。いや、ないことはないか(笑)。笑わせようとしてるんだけど、それ
をギャグとして提出はしてないと思います。「どうだ、おもしろいだろ?」と差し出すより、作ってる側が笑い
たくて作ってるところがある。

尾鷲知恵 …なんですかねえ。何回か出てるうちに、日常的なのに、奇抜で奇天烈なものが含まれている印象を
強く感じるようになりましたけど、具体的には言えないんですよ。日常なんだけど、日常でそんなこと言わない
みたいな(笑)。何かそういう、日常と奇天烈さが混ざった独特の感じが、マグらしさなのかなあと思います
ね。表現しにくいです(笑)。

    メンバーになったことで、自分の中のマグネシウムリボンという存在は、変化しましたか?

芹川 お客様じゃなくなってしがらみが増え、不自由になることの方が多いと思う。たとえば要所要所の飲み会
に行かなければならないとか(笑)。行かなきゃダメというルールがあるわけじゃないんだけど。あと、飲みに
限らず「なんで来ないの?」という場面が増えます。マグに入ったのは、作っているものが、自分が作りたかっ
たものだからです。客演でいるうちは「自分の作りたい芝居だ」と思っているだけで良かった。メンバーになる
と、思うだけじゃ済まないです。いいことばかりかというと、良くない面の方が目についたりします。結婚する
ことで相手のイヤなところが見えてくるみたいな。この芝居のここイヤだなというのが、自分の出てないシーン
に対しても気になるようになりました。根本的にいえば、この芝居これでいいのかな、とか。マグネシウムリボ
ンイコール自分になってしまうので。受け身ではなくなって、主体的になってきました。

尾鷲 客演の人達に対して、自分がメンバーなんだという意識を持って行動することが多いです。できてるかど
うかはともかく。たとえば、稽古場には早く来ようとか。なるべく稽古場飲みには参加しようとか(笑)。お金
さえあれば飲みには毎日行きたいです。飲みの席ではお金の管理を自発的にします。シメは私がやる! みたい
に。たまに主宰に任せますけど。すいませんお願いしますって。芹川もたぶん、飲みに関しては同じように思っ
てると思います。まあ、飲みは「たとえ」なんですけど、「こっちは私に任せて!」と思う分野が、それぞれあ
るということですね。

    主宰に質問したいことはありますか?

芹川 そうですねえ(笑)…ここ一年くらいで心に残った芝居・映画はありますか?

塚本 大島渚監督の「新宿泥棒日記」をビデオで久々に見て、60年代の空気感と挑発的な演出にしびれましたね。

尾鷲 思い切り遊んでいいですよと言われたら何をしますか?

塚本 海でバーベキュー。昼間から酒。温泉。美味しい郷土料理。マイクスタンドのあるカラオケ。高原でツー
リング。下り坂しかないサイクリング。パラグライダー。スカイダイビング。演劇に関係あるのか?

尾鷲 人間性が出るからいいかと思って(笑)





マグネシウムリボン 次回公演

賞味期限の切れた毒薬
10/16(水)~20(日)

[会場]日暮里d-倉庫
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公演詳細 > 公式HP

  10/16 17 18 19 20
14:00    
19:00  
 
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