interview no.104 劇団こむし・こむさ
 
劇団こむし・こむさ
http://www.ichikiyo.com/komushi.htm
1968年から1971年までの4年間、大学生・高校生・社会人が集まり、三 島由紀夫、宮本研、八木柊一郎などの戯曲を上演していたグループ、それが「こ むし・こむさ」です。その後、演劇の道に進む者、就職する者、……それぞれの 人生を歩み、40年以上の時が流れ、今、再び結集して、復活公演をおこなうこ とになりました。復活にあたっては、オリジナル作品の創作をめざし、今回は 「右から三つ目のベンチ」を上演します。「こむし・こむさ」とは、仏語で“ど うにかこうにか”とか、“可もなく不可もなく”という意味があるそうですが、 そんな名前の軽妙さを尊重しつつ、よい意味で観客の皆さんの予想を裏切ること ができれば幸いです。





――劇団こむし・こむさ/作・演出の野村勇さんにお話を伺いました。

    劇団こむし・こむさのメンバーはどのようなものですか。

43年ぶりの復活公演ですから、1971年当時高校生であったとしても、 すでに60歳を超えていることになります。プロとして舞台を踏んだ者、音響家 として活躍中のメンバーもいれば、企業・教育現場で定年をむかえた者、現役の 法曹界の人間、主婦……と、さまざまです。新しく加入したメンバーもあり、平 均年齢の下降に貢献してくれています。メンバーではありませんが、スタッフの 協力者の力がなければ、復活公演は実現しませんでした。

    43年ぶりの公演は、どのようにして決まったのですか。

はじめは、既成の作品の上演を検討していました。話し合いをかさねる中で、 「私たちの親の世代は戦争を経験し、その話を私たちは直接耳にしている。戦後 すぐに生を受け、昭和、平成と生きてきて、今、このとき、演劇として表現した いこと、表現しなければならないこと、表現できることは何なのか」という共通 の思いが確認されていきました。その思いからすると、既成のものを借りてくる のではなく、「オリジナルの作品を作り出していくことに意味があるのではない か」ということになり、「右から三つ目のベンチ」を書くことになりました。

    今、どうして劇団を復活させようと思ったのですか。">

その思いは一色ではなく、メンバーの数だけあるのだと思います。ただ、実 際に復活公演に向けて活動を始めてみて、分かったことがあります。一つは、演 劇上演を実現させる環境は、43年前と比較して、そんなに良くなったわけでは ないな、という実感です。たしかに劇場や練習の場所は増えましたが、苦労する ことはあいかわらず多くあります。もう一つは、その演劇上演にともなう「苦労」 は、43年前にも同じようにあったはずなのに、復活に向けてスタートするまで、 そのことをすっかり忘れていた、ということに気付きました。つまり、43年前 も、43年後も、さまざまな「苦労」がありながら、わけの分からない熱のよう なものに押されて、同じように芝居を作っているわけです。その、わけの分から ない熱が、劇団を復活させたのではないかと思っています。

    どのような演劇を目指していますか。

たしかに、わけの分からない熱のようなものが無ければ、演劇の上演などは 出来ないのですが、その熱だけでは継続していけないことも承知しています。ま さに、「どのような演劇を目指していくのか」なのだと思います。このことを、 さらに深めていかないと、熱の持続は図れないと考えています。共通の認識とし ては、前にも言いましたように、「自分たちの生きてきた時代を意識する」とい うことと、「オリジナルを目指す」ということがあります。「自分たちの生きて きた時代を意識する」云々と言うと、シニアによる、シニアのための演劇を目指 すのかと誤解されそうですが、私たちは年齢にこだわらず、新しいメンバーを求 めています。その新しいメンバーとの芝居作りの中に、過ぎてきた時代の経験や、 失敗や、思いが、役立ったり、投影できたりすればと思っています。

    「右から三つ目のベンチ」のテーマについて教えてください。

ドラマの一つのシーンが印象に残っています。時代は幕末、上士の若者が、 下士の若者に道の端に膝をつかせ、通っていったシーンでした。時代劇で、お殿 様に対して広間にずらっと並んだ家来たちが一斉に頭を下げたり、武士の行列を 庶民たちが地べたに座って見送ったりするシーンなど、何度も見てきて、当たり 前のように見過ごしてきたのに、上士と下士の若者のシーンは、何故か、強く印 象に残りました。身分の制度があって、そうしているのですから、なんの不思議 もないことなのでしょうが、そのような場面での上士と下士の若者の心の内に興 味を抱いたのです。明治元年が1868年ですから、146年経って、今の日本 があります。146年経っているのですが、「なんの不思議もないこと」のよう に見えて、よく考えてみると、おかしいことが今もあるように思えます。

    「右から三つ目のベンチ」の見所は何ですか。

今お話しした上士と下士の若者は出てきませんが、それが、どんな風に形を 変えて表現されているか、ご覧になっていただければと思います。また、スタッ フの音響効果、照明、舞台監督は、長年その道で実績を積み上げてきた面々であ ることを強調したいところです。 ですが、芝居はやはり、最終的には「役者」だと思います。スタッフの面々と違 って、キャストのほとんどは、いわゆる「素人」です。素人ですが、もし、生き 生きと魅力的に演じられたら、素人も玄人もなくなる気がします。見終わったあ とに、登場人物の何かが心に残ったり、妙にひっかかったり、笑っちゃったり、 そんな演技が現出しはしないかと、夢想しています。

    今後の活動計画について教えてください。

未定、というのが正直な答えです。ただ、今回の「右から三つ目のベンチ」 の上演後、皆の意志によって、次の芝居に取り掛かっていくのであれば、次の脚 本が必要になります。その脚本はすでに書き終えています。

次回公演

劇団こむし・こむさ
『右から三つ目のベンチ』
日程 > 10/28(火)

  10/28
18:30

 

 
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