劇団こむし・こむさ
http://www.ichikiyo.com/komushi.htm
1968年から1971年までの4年間、大学生・高校生・社会人が集まり、三
島由紀夫、宮本研、八木柊一郎などの戯曲を上演していたグループ、それが「こ
むし・こむさ」です。その後、演劇の道に進む者、就職する者、……それぞれの
人生を歩み、40年以上の時が流れ、今、再び結集して、復活公演をおこなうこ
とになりました。復活にあたっては、オリジナル作品の創作をめざし、今回は
「右から三つ目のベンチ」を上演します。「こむし・こむさ」とは、仏語で“ど
うにかこうにか”とか、“可もなく不可もなく”という意味があるそうですが、
そんな名前の軽妙さを尊重しつつ、よい意味で観客の皆さんの予想を裏切ること
ができれば幸いです。
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――劇団こむし・こむさ/作・演出の野村勇さんにお話を伺いました。
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劇団こむし・こむさのメンバーはどのようなものですか。 |
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43年ぶりの復活公演ですから、1971年当時高校生であったとしても、
すでに60歳を超えていることになります。プロとして舞台を踏んだ者、音響家
として活躍中のメンバーもいれば、企業・教育現場で定年をむかえた者、現役の
法曹界の人間、主婦……と、さまざまです。新しく加入したメンバーもあり、平
均年齢の下降に貢献してくれています。メンバーではありませんが、スタッフの
協力者の力がなければ、復活公演は実現しませんでした。
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43年ぶりの公演は、どのようにして決まったのですか。
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はじめは、既成の作品の上演を検討していました。話し合いをかさねる中で、
「私たちの親の世代は戦争を経験し、その話を私たちは直接耳にしている。戦後
すぐに生を受け、昭和、平成と生きてきて、今、このとき、演劇として表現した
いこと、表現しなければならないこと、表現できることは何なのか」という共通
の思いが確認されていきました。その思いからすると、既成のものを借りてくる
のではなく、「オリジナルの作品を作り出していくことに意味があるのではない
か」ということになり、「右から三つ目のベンチ」を書くことになりました。
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今、どうして劇団を復活させようと思ったのですか。">
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その思いは一色ではなく、メンバーの数だけあるのだと思います。ただ、実
際に復活公演に向けて活動を始めてみて、分かったことがあります。一つは、演
劇上演を実現させる環境は、43年前と比較して、そんなに良くなったわけでは
ないな、という実感です。たしかに劇場や練習の場所は増えましたが、苦労する
ことはあいかわらず多くあります。もう一つは、その演劇上演にともなう「苦労」
は、43年前にも同じようにあったはずなのに、復活に向けてスタートするまで、
そのことをすっかり忘れていた、ということに気付きました。つまり、43年前
も、43年後も、さまざまな「苦労」がありながら、わけの分からない熱のよう
なものに押されて、同じように芝居を作っているわけです。その、わけの分から
ない熱が、劇団を復活させたのではないかと思っています。
たしかに、わけの分からない熱のようなものが無ければ、演劇の上演などは
出来ないのですが、その熱だけでは継続していけないことも承知しています。ま
さに、「どのような演劇を目指していくのか」なのだと思います。このことを、
さらに深めていかないと、熱の持続は図れないと考えています。共通の認識とし
ては、前にも言いましたように、「自分たちの生きてきた時代を意識する」とい
うことと、「オリジナルを目指す」ということがあります。「自分たちの生きて
きた時代を意識する」云々と言うと、シニアによる、シニアのための演劇を目指
すのかと誤解されそうですが、私たちは年齢にこだわらず、新しいメンバーを求
めています。その新しいメンバーとの芝居作りの中に、過ぎてきた時代の経験や、
失敗や、思いが、役立ったり、投影できたりすればと思っています。
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「右から三つ目のベンチ」のテーマについて教えてください。
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ドラマの一つのシーンが印象に残っています。時代は幕末、上士の若者が、
下士の若者に道の端に膝をつかせ、通っていったシーンでした。時代劇で、お殿
様に対して広間にずらっと並んだ家来たちが一斉に頭を下げたり、武士の行列を
庶民たちが地べたに座って見送ったりするシーンなど、何度も見てきて、当たり
前のように見過ごしてきたのに、上士と下士の若者のシーンは、何故か、強く印
象に残りました。身分の制度があって、そうしているのですから、なんの不思議
もないことなのでしょうが、そのような場面での上士と下士の若者の心の内に興
味を抱いたのです。明治元年が1868年ですから、146年経って、今の日本
があります。146年経っているのですが、「なんの不思議もないこと」のよう
に見えて、よく考えてみると、おかしいことが今もあるように思えます。
今お話しした上士と下士の若者は出てきませんが、それが、どんな風に形を
変えて表現されているか、ご覧になっていただければと思います。また、スタッ
フの音響効果、照明、舞台監督は、長年その道で実績を積み上げてきた面々であ
ることを強調したいところです。
ですが、芝居はやはり、最終的には「役者」だと思います。スタッフの面々と違
って、キャストのほとんどは、いわゆる「素人」です。素人ですが、もし、生き
生きと魅力的に演じられたら、素人も玄人もなくなる気がします。見終わったあ
とに、登場人物の何かが心に残ったり、妙にひっかかったり、笑っちゃったり、
そんな演技が現出しはしないかと、夢想しています。
未定、というのが正直な答えです。ただ、今回の「右から三つ目のベンチ」
の上演後、皆の意志によって、次の芝居に取り掛かっていくのであれば、次の脚
本が必要になります。その脚本はすでに書き終えています。
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