今回審査員をやらせていただくにあたって、私は見る専門家ではないので、自分の見方で見る事にしました。
													見たことに関してコメントすることは、私も演者・作者なのですべて自分に還ってくる言葉と思い、発言いたします。
													身体にどれだけ向かっているか、そこにダンスを感じるか、という点に重きをおいて拝見しました。
												全体として、こんなにも色々な人がいて踊っている、ということに直に立ち会えたことが驚きでした。
														審査員としてdie pratzeに来ていなかったら、見る機会を失っていた人も多かったと思います。
														1月の公演なので、みんなお正月も稽古してたんだろうなあ、とか勝手に想像して、やると決めてから本番の舞台に立つまでの大変な道のりを歩んだことに拍手をしたいと思います。
												一方、「やりたいこと」を突き詰めてとことんそこに向かったかというと、まだまだ余地のある作品が多かったと思います。あるいはもし、とことん「やらない」と決めたなら、「やらないこと」をとことんやるべきだと思いました。
														自分にも言えますが、これはここまでできればいいだろう、というようなことはありません。やればやるほどゴールも遠のいてどんどん厳しくなっていくことに、タフに向かっていくことがもっと必要なのではないかと感じました。
														振り付けの場合、振りになったとたん、身体の強度が落ちるケースも数多く見られました。けっこうな落とし穴です。
														振りが目的なのか手段なのか、ということを考えさせられました。
														またいくらやりたいと思っても、身体がついていかなければ悔しいばかりなので、やはり日々の身体作り(肉体だけでなく)は絶対に必要と思いました。作品を作り始めたばかりの人も多いかと思いますが、これから続けていけるか、というのが大きなポイントなのではないでしょうか。やりたい人は是非続けていってください。どうしたら続けられるかは、自分でなんとかしてください。とにかく続けていってみなくては。
												余談ですが、今回、ダンスと思っていなくてもダンスを感じる瞬間が、面白いことに作品毎の舞台転換のときに現れたりしました。そういう意味では、ダンスを見る方(今回の私の立場です)にもダンスを見つける力が問われるようにも感じました。ダンスを見つけることは、楽しいことなのではないかと思います。私以外の審査員の方々はその楽しさを見つける喜びとともに日々を過ごされているのかな、とふと思いました。
												以下上演順に。勝手に感じたことなど。(敬称略)
												
													潤湖
													身体、特に関節の動きがすごい。繊細で奇妙な動きが魅力的。中盤、2曲目の時に曲の方にひっぱられて、身体を支えるものが弱くなった。音との関係、繋がり方に意識的になるとよりよいのでは。
												西村つむぎ
													若い身体。その良さがある。作品全体がもやっとしている。動きやシーンがピークに達しているときの持続は、もっと長くてよいのではないかと思う。身体はもっと作れると思う。
												石井則仁
													物質としての身体の浮かび上がらせ方に工夫があった。照明の色が補色のように身体に現れて面白かった。ラストの方の轟音のところはもっと見たい。
												若気の至り
													なんだか嫌いになれない3人組。器用な人がいろいろとやる。ユニゾンの振りと最後の踊りまくりがよい。
														若気の至り、というユニット名、よく付けたなあ、と感心。
												川村美紀子
													やりたいこと、突っ込んでいき方が明確で、強い。今回の題材や印象はネガティブなものもあるが、一貫して強く印象に残った人。自分がやっていることに対する感覚の持ち方が一定なので、違う距離の置き方(開放や閉塞)も見てみたい、気もするが、これでいいのかもしれない。
												荒悠平
													見終わった後の印象が心地よい。動きまくったあとの汗がすごくて、人間てこんなに汗をかくんだと再確認した。
														優しい触り心地の作品。音と身体と意識のバランスが風通しのいい感じの人。
												anomie3
													おそらく結成したてなのだろうか。3人で何に向かうかが、まだ定まっていない感じがした。
														ユニゾンがそろわないのかそろえないのか、気になったからかもしれない。動きそのものが目的になっているように思えた。だからきっと全てこれから、なんだと思う。
												橋本正彦
													登場した時の姿が、なんでもないかんじでよかった。歌の連続、高揚感が訪れそうなところでやめちゃうのがもったいない。脱いだ服を着て、また脱いで。どうしたいのか気になった。
												△公園
													可愛い女子3人。愛らしい容姿だが、やることは淡々としている。きちんと作ろうとしすぎている気がした。ゆくゆくはもっと破綻してみたりしてもよいのではないか。あるいは、自分たちの行為をもっと貪欲に楽しんでもよいのでは。
												三石祐子
													初々しい可愛らしさとちょっとしたエロスのある人。普段着な感じの作品。柔らかい感触の身体性。身体はもっと鍛えられそう。そしたらもっと違う魅力も加わりそう。
												岩佐理恵と風岡美沙
													赤いスリッパを衣裳の色合いがキレイ。二人が相似形の存在に見えた。ゆるやかな作品になっているのはわざとだろうか。もっとやればいいのになあ、という気がした。
												三体
													3人とも身体能力も高く、よく訓練された身体。これは強み。でもそれをどう活かしていくのかが見えない。
														この3人に限らないけれど、「上手い」ということはそれだけハードルが上がる。もっと自らハードルを上げて欲しい。
												矢萩竜太郎
													暗闇の中での声、よい。言葉を発する身体の熱を感じた。難曲に挑戦して、その事に身体でどんと向かっているのが好感が持てた。音楽を結びついた瞬間の身体はつよい。曲の後にもうひとつ見たかった。
												原田香織
													正直に、丁寧に、等身大で作った作品と感じた。詰め込まない分、空間、余白が見える。身体そのものよりも、身体のない空間が見えて面白かった。シンプルで、見終わった後になんだか爽やかさ切なさが残る。
												浜田レイコ
													着替えの多さが謎。それがコンセプトなのかも謎。何かが起きる前に次に行ってしまう。自分の身体のよい所と弱い所を一度シビアに見つめてみるとよいのではないかと思う。
												
													KDANCE&RUBY
													男の人が踊っていくうちに変化していくのがよかった。女の人がことごとく破綻しないこととの対比が不思議だった。
														互いに触れる時に、そこには何も起こらなくて、触れるということが必要なのか考えさせられた。
												高橋桂子
													自分の世界にまとまっているという印象を受けた。踊る時にはたまにはもっと開けて欲しいと思ってしまう。
														ラストの逆さまの光景が好き。
												柿本真二・庄司舞
													このような風合いの作品、ダンサーはちょっと珍しいと感じた。火をつかって視線をひき込むやり方、うまい。
														二人の関係性も影があってエロスもあって気になる。振りになったときにその匂いがちょっと弱くなる。
												小川麻子
													珍しい存在感の人。とてもよい声をしている。映像との絡みも楽しめたけれど、生身の身体の魅力がもっと出たらいいなあと思った。
												Kaoru Ikeda
													テキストと衣裳、身体の素材感がマッチしている。言葉の力は強い。ならば身体にももっと強さが欲しい。
														楔を打つような身体の瞬間が見たかった。
												武藤浩史
													個人的に今回もっとも身体をふりしぼって「ダンス」していた人。ほとばしっていた。身体の喜びを見た。
														見終わった帰り道、わくわくしたままだった。ブラボー!
												
													KAPPA-TE
													振りでもってどんどんゆく挑戦の仕方が好もしい。身体も強く、よく鍛えられていて、振り付けにもユニークさがある。それからどうするか、が見たい。
												宮崎喜子
													パイプ椅子とのやりとりが実は計算しつくされていて、ネタにならずにダンスになっていた。すごい。
														肉体が発するダンス。閉じこもっていない。見ていてどんどん嬉しくなった。
												喜多真奈美
													すごく若い、と感じる。ヘン顔が上手い。その度胸がよい。音楽のリズムと微妙にずれていて気になる。これが出発としたら、もうひと工夫、ふた工夫、たぶんもっと探せるはず。
												村松利紗
														自分の見せ方をものすごくよく分かっている人。舌の収め方がエロい。背中がきれい。ある意味完成された自身・世界をもっているように思う。
												上條奈美子
													憎めないかんじの人。アイデアや衣裳、小道具などとてもカラフル。身体の動きの質もそのようにカラフルだといいなあ、と感じた。
												ビルヂング
													個性の異なる若者3人組。見始めはどうなるかと思ったが、見ているうちに何故か引き込まれ、3者3様の魅力が活きてくる。アレックスは身体がとても綺麗で身体能力が高い。福原冠は器用ではないが佇まいがよい。加藤紗希は可愛すぎるのがこれからの課題になっていくのでは。振りや動きはもっと攻めて、できることをやるのではなく、壁をガリガリ壊すつもりでやってほしい。
												立本雄一郎
													声と滑舌がすごくよい。思考的なテキストと生身の身体が一人の人間に同時に存在しているところが面白かった。
														あんなに動いても声がクリアなままで驚いた。
												ガイシャサヤカ
													あの短さが戦略だとしたらすごいと思う。はたして。
												RIE TASHIRO
													始めのゆっくりの動きが美しい。音楽や照明に身体を取られているように感じた。身体そのもの、動きそのものをもっと見たい。
													unica
													衣裳の赤と、振りと、物語と、全体の質感に一貫性がある。これからもこのテーマをやっていくのなら、
														さらにどすん、と深いところまで掘って落っこちて這い上がるといいな、と思う。
												Tres
													間とつなぎがよくなったら、もっと見入るのではないかと思う。散らかったままの感がある。不器用そうな女の子など、面白そうなのでひとりひとりの個性がもっともっと立ってきたらよいなあ、と思った。
												スピロ平太
													油断して見ていたら足元をすくわれた。びっくりした。何故男性性器はあんなにも滑稽で切ないのか。
														暗めの照明の中、ぼや~っと見てしまった夢のような幻のような。
												中川紘子×SDAT
													不思議なフレッシュな魅力がちらちら見えた。作品のトーンが変わらないので長く感じる。動きはもっと探せるはずと思う。決めつけないといいのではないか。
												チーム禁色
													見ている内に、噛み合ない奇妙さ、なにかしら分断されたような変な気分になった。何かひとつ、柱のようなものを立てたらよかったのではないだろうか。コラボでもよいけれど、素材が集まったあとに煮込むような作業が必要なのでは。
												もっしゅ(岩佐妃真)
													歌と声、うっとりした。歌っている時の身体は何かしらの存在の強さがあるのだけれど、動きだけになった時にその強さは失われてしまう。その謎に向かって欲しいと感じた。
												猫 猫 猫
													一緒に踊ったら楽しいだろうな、と思うところがあった。間や密度の具合が一定なので、あるところまでしか誘い込まれない。惜しい。ツボみたいなものはどこにあるのか、探りあててほしい。
												星野琴美
													丁寧で身体もよく効く。集中力がある。濃い時間。シーンが高まっていった時、運動としてではなく存在として高まっていくともっと持っていかれたかも、と思う。
												中村蓉
													とても魅力のある人だと思う。でもその魅力が引き出されていない。振りにしても、おかしさについても、物語についても、もっと磨けると思う。心地よいところで留まっている気がした。