Q 作品をつくるときにどんなことを考えますか?
A 今回は何のためにつくるのか、誰にむけているのかを考えます。
例えば、亡くなった方や親族です。自分がここにいるのは両親や家族がいてのことですし、今まで生きてきた中で出会った方の影響も同じです。それは私だけでなくみんな同じことで、作家と観客の共通点だと思っています。
それが必要だと考えるようになったのは、以前に地方に踊りに行った時、「関心するけど感動しない」という言葉がきっかけでした。関心とは他人事で引く気持ち、感動とは自分事で前のめりの気持ち。それ以来、共通点やハッと前のめりになる瞬間を探したりしています。
視点を変えるのも必要ですよね。同じ振りを突然酔っ払いのつもりでやったり、動かないで焼き鳥の気分でやってみたり。少しバカバカしいと思いますが、基本のバレエも色々な「~のつもり」でやってみると新たな発見がありますよ。
ある程度の段階になった時には、自分の陥りやすい癖や間の取り方は考えて変えるようにしています。
Q 作品をつくる上で悩むことは何ですか?
A 毎回創作のプロセスが思いだせないことです。
10作品あれば10通りの創り方なのかもしれません。それなので先が読めなく、出来上がるのかどうか焦ります。
あと、グループ作品や他人に振り付けさせていただく場合に、頭で描く絵やニュアンスを伝えるのにかなり苦労します。だんだんあれこれ工夫するのが楽しくなってきました。
Q ダンスを始めたきっかけは?
A 小学生の頃、新体操クラブをやっているスタジオの広告を見つけて、周りで誰もやっていないということで、芸能界に入るような気分で始めました。
1年目の時に、間違って3位入賞をいただいてから「自分でも出来るかも。」という気持ちが表れて楽しく燃え続けることができました。国体優勝経験のある先生だったので、次の年に自分の踊る振りをご指導いただきながら創るようになって、漫画を見てポ―ズの研究をしていました。
出来れば新体操を続けたかったのですが、年齢制限でやむを得ず同じスタジオにあったジャズダンスに移行して、進路を悩む頃に都内のオ-ディションに合格することができ、それから色々とご縁をいただくようになりました。
紹介いただいたバレエの長谷川惠子先生には今もお世話になっていますが、形よりも感覚に気づかせてくださるので、私の身体を創ってくださった感覚の育て親だと思っています。
Q ダンスはあなたにとって何ですか?
A 私にとってダンスは、修行です。苦しいということではありません。
教えていても作品を創っていても、何かに気づくことが必要で、始めてのことや忘れてしまったことを思い出させてくれるような出来事があります。1回の稽古、公園で遊びながら踊るのもその場にしかない空気がありますよね。考えて並べた身体も素晴らしいですが、そこにある体は考えなくても想うことで何かしていると思います。
それに素直になれる自分かどうか、自分の中の欲望や雑念にまけてしまうのか。会話、コミュニケーションと同じです。責任を持つこともダンスから教わっていると思います。
他には、ずっと武元賀寿子先生のDANCEVENUSというグループでお世話になっていて、最近、自分の主宰するPICK.LEというグループで活動し始めた時に、ソロとは違うコミュニケーションがあることに気づきました。1対1で話す時とグループで話す時の違いみたいなことです。知らない間に自分は身体のコミュニケーションの土台を形成していただいていたのだと感謝しています。
Q 今後の展開はどのように考えていますか?
A 今は自演自作のほかに、グル―プの振り付けでも自分が参加して踊っていますが、どの人が振り付けしたのかわからないくらい、その人にあったその人ならではの面白い振り付けが出来たらと思っています。そのためには、一時的に作品のために集まることではないグル―プを考えています。どのくらい先かはわかりませんが、小さくてもカンパニ―として活動していきたいです。
観たことのない身体、したことのない振り付けで、ダンスというジャンルから超えるようなことを地味に出来たら、と思います。