Qcrossroad project/交差点企画はどんなコンセプトで結成されたのですか?
A元々は色々な人に出会おうと思ったのです。交差点ですから。活動休止からの復帰後はシンプルに演劇を続けていきたかったので、本当に続けたいのであれば信頼できる仲間が必要だと思いました。演劇は一人で作るものではないので。あくまでも個人の力ではなく、必要なのは集団力です。僕は本物を目指せる集団の一部になりたかったのです。
Qどうやって作品選びをしているのですか?
A生活をしていると「気になること」がいくつか出てきます。「気になること」が気になりすぎて、本当に辛かったり苦しかったり、逆にうれしかったりします。実際には単純に言葉だけでは表せない状況ですが、とにかくその「気になること」が僕の人生や生活を支配します。生活の中で意識している時間が非常に長くなります。基本的には生活なんてできなくなってしまいます。その「気になること」を表現し、その作品に関わった人たちに共感してもらうことによって、ある程度その支配から僕は解放されます。作品選びをする流れは、まず「気になること」が自分の中にあるのが前提で、色々な戯曲や詩だとか、世の中に既にある作品に触れたときに、感覚が反応し「この作品をやろう」という流れになります。なので、条件としては二つ揃う必要があります。一つ目は「気になること」。もう一つは「気になること」に作用する作品の存在です。
Qどうやって演出プランを練っていくのですか?
A演出プランを練る段階では、基本的に作品は決まっているので、まずは作品を読み解きます。更に自分の中のぐちゃぐちゃした妄想や想いや、そういったものとあわせていきます。あとは出演者に正直にイメージや気持ちや世界をぶつけていくと世界が広って、演出プラン、作品が出来上がります。
Q演出する上でのモットーと言うか、心掛けている事はありますか?
A嘘をつかないように心掛けています。苦しいことを表現したい場合は、とことん自分が苦しいと思うような表現を作りたいと思います。信じられないほど苦しいと思うような。演出は見つめる作業だと思います。
Q演出する上で一番難しい事はなんですか?
A生活費を稼ぐこと。仕事とのバランスが難しいです。僕は普通に働いているので物理的に時間やお金の問題が一番難しいです。それに付随して様々な問題が発生します。
ちなみに演出するということだけであれば、難しいことは実はあまりないです。本当に難しいのは、演劇を続けるということと、集団を維持するということです。演出の事だけを考えれば良いのであれば、もっと本当に色々できると思います。ほとんどの演出家が抱えている問題だと思いますが。
Q(舞踊とか映像とか歌とか色々ある中で)なぜ演劇なのですか?
A偶然です。たまたま今までの人生の流れでそうなっているだけで、今となってはこれしかできません。他のことはもうできないです。失敗したかな。
Qこれからの演劇に求められている事は何だと思いますか?
A特にないと思います。誰も演劇になんて何も求めていないです。だから、演劇の世界に生きる僕たちが訴えていくべきだと考えます。世界には演劇が必要なんだと。
Q今の社会をどう思いますか?
A分かりません。他の社会を知らないので。「手軽」「簡単」「効率」が価値の高い社会だとは思います。文章を書く上で必要とされるのが、「分かりやすい」「簡潔」「正確」というような。そういう価値観から見捨てられてしまったものがあって、なんだかさみしいことがたくさん起こっているように思えます。
Qこれからやってみたい作品はありますか?
A具体的なものはありません。自分のなかで「気になること」はあるので、そこを元に作っていくだけです。できれば、それが世界に良い影響があれば良いのですが偉そうなことは言えません。だから、とにかくどんなに小さくても作品に対して、せめて嘘はないようにしようと思います。それは本当に難しいことだと思うのですが。
Q最後に何か言いたいことがあれば。
A考えていることが二つあります。一つは舞台芸術は独自の価値を見つけるべきだということ。もう一つは、舞台芸術がいかに社会貢献できるかということ。はっきり言って、舞台芸術なんて無くて良いはずです。でも僕は舞台芸術がなくなると困るので、この二つを考える必要があります。今、答えのきっかけとしているのが、舞台芸術は面倒臭いということです。観に行くのも作るのも。今の効率化社会からは逆行しているからこそ出来ることがあるのではないかと思っています。決して公演活動に留まらず、できることはどんどんやって現代社会でのcrossroad project/交差点企画が存在していける場所を見つけなければいけないと考えています。まずは劇場に来る人を増やしたいです。僕たちの公演に限らずに、色々な舞台芸術を劇場に観に来る人が増えればいいなと思います
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