Special Interview Vol.016
じゅんじゅんSCIENCE インタビュー

じゅんじゅんSCIENCE インタビュー



じゅんじゅんSCIENCEのじゅんじゅんさんに伺いました。

インタビュアー ※以下(I)

「ダンスとマイムの融合」といった紹介のされ方が多いように思いますが、ご本人としては、はっきりとした境界線はあるのでしょうか?

じゅんじゅん ※以下(J)
むしろ、僕からいわゆる「ダンスのひと」に聞きたいのですが、明確に「マイム」と「ダンス」の線引きをしているダンサーや振付家っているのでしょうか?
僕がダンスの舞台を観ていて「これ、マイムじゃん?」と思うことは多々あります。僕自身は百万回くらい訊かれてますけど、そういう方に、僕が聞いてみたいです。(笑)


(I)表現の手法という点ではどうですか? 

(J)確かに、「動きの捉え方」という点では、ダンスとマイムでは発想の違いはあると思います。
例えば、“演技の延長”として体を動かす場合と、物理的な“運動の軌跡”として体を動かす場合では、出発点は違うけれども、外から見たときには明確にどっちかはわからなかったりしますよね? しかし確実に「動きの動機」は違うわけで。そういった違いはあると思う。
マイムといっても、僕はいわゆる「無言劇」(=言葉がない演劇)ではないところから出発していることもあって、特にダンスとマイムの違いを感じてはいません。まあ、「体を使う」ということ自体はどちらも同じだからこそ、その中での違いが気になるのでしょうね。「踊りたい」と思うことはあっても「ダンスでありたい」と考えるほうではないですし。
僕自身は、さまざまな手法を使いつつ時間を紡ぐ、という意識で取り組んでいます。


(I)観ている側としては、“演技の延長”であれ“運動の軌跡”であれ、マイム的、演劇的なじゅんじゅんさんのパフォーマンスは、ダンス界においては強いオリジナリティだと思います。ご自分の持ち味やオリジナリティというのはどんなことだと思いますか?

(J)自分のことはよくわからないのですが、似ている人はいないですよね?(笑)
あんまり参考にしている人もいないので、結果的にオリジナリティがあるのかな、と思ってます。(笑)
まあ、ある種の境界線上にいるんだろうなとは思います。以前参加したお芝居の現場でも特に違和感はなかったし。
ただ、僕自身にとっては、「オリジナルであるかどうか」ということよりも、単純に「おもしろいかどうか」ということのほうが重要だったりします。作品を創るときも、出発点はいつもそこですね。その、「おもしろい」と思う観点がオリジナルなのかなぁ。(笑)


(I)それでは、そういった作品を発表する場として、現在のダンスを取り巻く環境についてどのようにお考えですか?

(J)危機的な状況だと思っています。
日本のダンス界に限って言えば、今はすごく閉鎖的ですよね。
ダンスの公演に足を運ぶのは、ダンサーとかダンスに関わっている方ばかりで、一般のお客さんにはなかなか受け入れられていない。また、ダンサーもそれをわかっていて呼びにくいから、いつまでたっても客層が拡がらない…という悪循環に陥ってしまっているのでは、と思います。
もうちょっとアホなことをやる人が出てきてもいいんじゃないですかね? 「言ってることはわかんないけど、とにかくやります!!」みたいな鼻息の荒いヤツとか。(笑)
「コンテンポラリーダンス?高尚な芸術なんでしょうが、私にはよくわからない…」という根拠のないあきらめと偏見というか、価値観を持ってしまっているお客さんって多い気がします。また、ダンスをやる方も「そうしないといけない」みたいな変なステレオタイプに縛られてしまっているのではと思います。
あと、ちゃんと「売れたい!」と思う人がもっと出てくるといいですね。お客さんからお金をいただく『仕事である』という基本的なことを意識すべきだ、と自分は思っています。


(I)新作のソロダンス作品「怒りながら笑う」についてお聞きしたいのですが、なんだかわかるようでわからない不思議な感覚のタイトルですが、これはどういう意味でつけられたのですか?

(J)竹中直人のギャグで、昔「笑いながら怒る人」というのがあったんですが、それではありません。(笑)
僕が今回の作品で考えているのは、いろんな状況で起こる矛盾した力の拮抗とか、喜怒哀楽では割り切れない感情とかです。にこやかに笑っている人でも、実はいろいろな思いをかかえていたりとかしますよね。
地球では重力に引っ張られているけど、それに拮抗して立っていることによってはじめて意思がうまれる。「立つ」という行為は、地球の重力に対し反発することで可能になるわけで、そこには何かに拮抗している、ある種の緊張感があると思うんですよね。拮抗している状態には、エネルギーが生まれていて強度がある。そういうエネルギーを舞台で見たい。それこそが『生で観る』何よりの理由だと思うんです。
また、今回は操り人形を使うのですが、「糸で引っ張られているからこそ立っている」という操り人形の状態そのものがテーマにふさわしく、人形とのコラボレーションを楽しみながら進めています。


(I)人形を使うことで抽象的なテーマが具象化され、観客もよりテーマに入りこみやすくなりそうですね。前の質問に関係しますが、こういった演劇的であったり、マイム的だったりする演出は、ダンス関係以外の方にとっては、鑑賞しやすくなる要素ですよね。

(J)はい。「ダンスってよくわかんないんだよね」という人にこそ観に来てもらいたいです。
そもそも、自分が観客だとして、「おもしろいと思えるかどうか」を常に考えながら創っていますし。
舞台を観るおもしろさっていろいろあって、例えば見た瞬間に「おもしろい!」と思うこともあるし、観終わってからじっくり考えるような、何かをくれることもまたおもしろさのひとつですよね。
ダンス作品というのは単に「きれいな体や動き」を見せるだけのものではないし、ほかの舞台作品と同様、思考の結晶としてあるわけですね。単純な刺激だけではなくて。
頭でっかちにならず、観客の知的な好奇心をくすぐるようなかたちで作品を提供したいと常に思っています。ま、鍛えに鍛えたこの頭と身体でいろいろ考えてますんで。(笑)
そういった意味で今回の作品も面白いです、ホントに! まだできてませんけど。(笑)




(I)ありがとうございました。これからのご活躍も楽しみにしています。




次回公演

じゅんじゅんSCIENCE 『怒りながら笑う』

2/19(金)~2/21(日)

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