「アシメとロージー」主宰の和泉伸吾さんと相羽崇史さんにお話を伺いました。



アシメとロージーについて教えてください。
和泉:アシメとロージーは、私と相羽による演劇ユニットです。私が脚本を書き、相羽が演出するというスタイルで、大学在学中からずっとコンビを組んでやっていたのですが、昨年大学卒業を機に、ユニットを結成しました。アシメとロージーとしては今回で2回目です。


脚本家と演出家によるユニットというのは珍しいですが、アシメとロージーの特徴、持ち味を教えてください。
和泉:まず脚本は、歴史を題材として取り上げて、自分たちの生活レベルでそれを語っていくという手法で書いています。前作「広島バッゲージ」では、広島原爆という大きなテーマを、フリーターの青年のどうということない日常にスケールダウンして物語りました。今回の芝居も、広島原爆は大きなテーマのひとつですが、原爆というセンシティブな題材だからといって、タブーを作って表現を狭めるのではなく、ごく身近な話題として歴史を語っていきたいと考えています。
相羽:演出については、正直自分がどういう芝居を作りたいかということは、自分でもよくわかっていないです、ぜんぜん。ただ、芝居がかったような芝居はやめたい。でもまったくリアル志向というわけではなく、劇的なところは劇的に作るし、だけどふだんのリアルな生活は普段どおりに描きたい、という欲張りなところを目指しています。なんにしても、最終目的は明確に分かっていて、それはお客さんに楽しんでもらいたい。心を動かしたい、ということです。お客さんが他人事ではなく、自分に引き寄せて考えられるものを作っていきたいと思っています。


おふたりで衝突することはありませんか?
相羽:いろんな作演のスタイルがあって、一概にどれがいいということはないと思いますが、芝居に対する考え方が根本的に異なっている部分もありますので、意識のすり合わせは少し大変です。
和泉:つきあいは長いし、ほとんどのことはあうんの呼吸でできるんですが、自分たちのやっている芝居がちょっとずつ高度化、というか、他人の芝居のマネではなく、明確な指針がそれぞれ出てきているので、そういう意味では、ぶつかることは多くなったと思います。ちょっと語弊があるとは思いますが、一言で言うと、私がアーティスティックな考え方をすることが多く、相羽はエンタテインメントで考えることが多いです。なので、私が一生懸命考えて、こういう手法で行こう! と提案しても、それ退屈じゃない? と相羽に一言で片づけられたりします。
相羽:まぁねー。でもだからこそ、ふたりのいいところを出し合っていけるんじゃないかなと思います。



脚本家として、演出家として、自分にしかできないと思うことはありますか?
相羽:会話のテンポです。日常生活って、意外と不自然な間とかが多くて、逆に芝居の中のほうが変にリアルっぽいということがあると思うんですが、そういう、不自然で面白い間を芝居において再現することは得意です。
和泉:古い時代の描写はよくお客さんに褒めていただきます。その時代には、その時々のはやり言葉とか、独特の言い回しがあって、それを使ってしゃべるということは、今の私たちが、今の言葉遣いでしゃべるのとは、やはり当事者たちの意識も大きく違います。その時代のしゃべり方を実践することで、その時生きていたその人の思っていたことがふと分かったりします。また、そんな緻密な描写で世界観を作り上げておきながら、それをいっぺんに壊すというか、日常生活に持ってきて自分ごとにしてしまうというやり方は、アシメとロージーならではだと思います。


普段の稽古はどのようにされてるのですか?
相羽:かなりラフな感じでやっています。代々木公園とかで、ビニールシートひいて、わいわいやっていますね。くりかえしシーンを練習したり、発声練習をしたりということは滅多にやりません。台本に書いてあるセリフをきれいにしゃべることももちろん重要なことですが、それ以上に、自然なままで舞台に立ちたいということがあります。さっきも言いましたが、日常生活は、意外と不自然なことのほうが多いものです。思ってることと全然違うことをしてしまうことも、よくあります。稽古では、雑談とか、普段の日常会話を取り入れて、だらだらやっています。ふざけているように見えますが、まぁふざけているんですけど、そこから得られるものが大きいです
和泉:「自然かつ劇的に」ということを意識してやっています。





おっしゃるような、独特な感覚は、以前からお持ちだったのですか?
和泉:以前は物語が好きで、構造に凝ったり、緻密なストーリー構成で、セリフ量もかなりあって、登場人物がときどき長ゼリフで解説しないと理解できないような物語を書いてました。でも、これはちょっと違うなと徐々に考えるようになってきました。最近の何作かは、歴史に存在する、かっちりとした物語を借りてきて、それをネタに、物語そのものを否定するような手法で脚本を書いていますが、でも、こっちのほうが逆にリアルなんじゃないかと思うようになってきました。


というと?
和泉:例えばある事件の話を書くとします。殺人事件とかで、従来の芝居だとその事件の経緯を、誰の感情も込めずに、誰の視点でもなく俯瞰することが多かったわけです。あるいは、ひとり主人公を立てて、彼の心理をお客さん目線で追っていく。でも、それはそんなにリアルじゃないんじゃないかと思っていて、その事件の当事者たちは、みんなそれぞれ全然関係ないことも考えていて、彼らの事件とは関係のない考えごとも含めるとごちゃっとしていて、それじゃストーリーにならないわけだけど、そっちのこともすごく大事で、そっちのほうがリアルだし、芝居として面白いものができるんじゃないかと思っています。


今回の公演にあたって、意気込みを
相羽:とにかく、自分たちがやったことのない、新しいことをやってみたいと思っています。次につながることを実践したいです。とはいえ
和泉:そう、この公演を見に来ていただいたお客さんに、全力で楽しんでもらう公演を目指したいです。いろいろ模索している私たちですが、とりあえずこの点だけは明確に結論が出ています。
相羽:面白いものを作るので、ぜひご来場ください!


以上


ありがとうございました!



アシメとロージー『サンデードリーム・ビリーバー』
8月26日(金)19時~
8月27日(土)14時~&19時~
8月28日(日)13時~&17時~
前売=2500円 当日=2800円 学生割引=1500円 twitter割引=2200円
予約=公式ホームページにて!
問い合わせ=info@asyme-and-rosy.com
作=和泉伸吾
演出=相羽崇史
出演=相羽崇史、鈴木俊伍、村上聡志、加藤安奈、永川謙、近藤厚史、金井あかり、渡部一志、高谷紗那
内容=傾いた家で、奥さんに逃げられた男がひとり、夢を見る。アシロジ自慢の緻密な構成とリアルな会話、しつこい笑いが満載です。 

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