黒沢美香 Kurosawa Mika
1957年(昭和32年)横浜生まれ。5歳から両親のもとでモダンダンスを習う。1982~85年NYに滞在。当時のNYダウンタウン・ダンスシーンをリードする振付家の作品を踊り、国内外の公演に参加する傍ら、ジャドソン・グループの出来事に出会い衝撃を受ける。帰国後は「黒沢美香&ダンサーズ」と名乗り、異なるジャンルのアーティスト等と即興性をベースとしながらダンスを捉え直す試みの作品創作・上演を継続。現在は、99年からのソロダンス『薔薇の人』シリーズ、メンバーの年齢差40歳となった黒沢美香&ダンサーズの活動の他、踊る大学教授陣
ユニット「ミカヅキ会議」を結成。次代を担う子どもの文化芸術体験事業や慶応義塾大学とコトラボ合同会社が運営する地域拠点「カドベヤ」での活動等、社会・地域連携プログラムに参加。舞踊コンクール第1位受賞の他、新人賞、優秀賞、舞踊批評家協会賞、日本ダンスフォーラム賞、ニムラ舞踊賞など受賞。日本のコンテンポラリーダンス界のゴッドマザーとも称されている。

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写真:慶応義塾提供


「黒沢美香&ダンサーズ」と、新ユニット「ミカヅキ会議」の作品を同日に上演するそうですね?

黒沢美香さん
 
ダンスしたい人、なにがダンスなんだ、という強者達の身体を懸けた渦中に何十年も置かせてもらっています。ダンスをどの方向に指すのか常に油断できない環境にいることを幸せに思っています。
 今回はダンサーズとミカヅキ会議の2作品を同時進行で創っています。同時進行といっても稽古時間は別々で、稽古場も別で、2つの畑を耕している感じです。よく育つか病弱なところはないか、雑草を取ったり水をあげたり支柱を立てて見張って歩く。責任は増えますが1つも2つも同じです。
 どんなに努めても嫌いなものは創れません。ダンサーズの新作とミカヅキ会議のデビュー作はどうしても似てしまう。でも本当は北の果実と南の果実のように鮮やかに変えられたらという願望で、それが今回の私の挑戦です。


2011年3月結成、5月ダンスデビュー@慶応大学
2012年8月「ダンスがみたい!14」に出演で本格デビュー

●オリジナル曲「渚の風」 作詞・作曲:前野隆司



写真(右):森泉

「渚の風」出演者
前野隆司:慶応義塾大学教授、ロボット工学者
武藤浩史:慶応義塾大学教授、詩人、作曲家
横山千晶:慶応義塾大学教授、英文学者


【ルール】
・第一(月)指定の場所に10時集合
・遅刻をしない
・空いてる部屋で稽古する
・これがなににつながるのか疑問でも歩む
・恥ずかしさを力に変える

【モットー】
1.   緻密な頭脳は呪われた祝福と開き直る。
2.   真理の到達不可能性を知りながら、能天気にそれを追求してしまうお目出度さが憲法。
3.   謝罪を口にする傲慢さは捨てる。



黒沢美香&ダンサーズのMさんが、ミカヅキ会議リハーサルの現場を取材しました。

~♪
わなげなさなげなとぅりっきー
いしかりたいからたりっきー

横山千晶さん
 
最近身体関係の夢をよく見るようになりました。なぜかしらくねくねのヨガのポーズのままで両手で体を支え、異常な速さで夜の道を移動しているとか・・・。まるでホラー映画の一場面みたいですが、自分では夢の中で「おお、ここまでできるようになったか、すごいぞ、私」と悦に入っているわけです。発見はありませんが、あえて言えば身体というのはつくづく思った通りにならないもんだなあということを再発見している日々です。ただ私の場合「頭で分かっていても・・・」ではなく「頭でもわかっていない」ことが多々ある、ということが一番の問題です。
 
私はなぜかしらリーダーです。皆さんもご存意ように、「内山田洋とクール・ファイブ」の内山田さんみたいに「いったいどの人がリーダー?」的な存在です。(といっても若い人はクール・ファイブなんて知らないよね。)2大フロントを引き立てるべく、いや引き立てつつ精一杯努力します。

武藤浩史さん 
 
仕事に疲弊中です。すさんでいます。そこに力の源あり、満面の笑みをたたえることがある。ゼンマイになったりフリコになったりで忙しい。
作詞・作曲:「愛と戦いのんだんだレゲエ」ほか
 
ミカヅキ会議はママ友の昼ごはんみたい。とつぜん現れた珍奇な肉親のようでもあり、人生がまたはじまる。なんでこんなもん始めたんだ?ベートーヴェンにダンスの振りが見えるようになった、というのは、発見なのか。
 リーダー横山の情けなさの勁さとロボット前野の能天気の智恵に注意!私自身は、心身共に病んでいるので、公演に出られるかどうか分かりません。言いかえると、張り切っている。

前野隆司さん 
 
2度も肉離れになりましたが、気力充実。目標は紅白出場です。引き裂かれた脳と身体を通り過ぎたいと思います。

 さん、はい!

わなげなさなげなとぅりっきー いしかりたいからたりっきー
わなげなさなげなとぅりっきー いしかりたいからたりっきー

ゆがなはーい ひがならーい
ゆがなlove me はかならーい

なせそではせそ やせそだnight
させそでませそ やんばんnight

~♪



写真:慶應義塾提供

「大きな女の踊り」work in progress
18人の大きな出演者
糸山明子 金子典子 木檜朱実 小島晴子 後藤茂 三枝はな さそうすなお 須加めぐみ 高野真由美
滝口美也子 玉邑浩二 戸川悠野 堀江進司 南呼子 吉川恵子 吉田法子 吉田由紀子 リナ・リッチ


女所帯という印象が強いダンサーズの中で、貴重な男性出演者3人にお話しを伺いました。

堀江進司さん
習い事なんて女子供のする事。前時代的な発言と怒りを覚える方もいらっしゃるでしょうが、女子供と見下してきた事に、むしろ多くの宝が潜んでいることをダンサーズに集う身体は体現しているし、世の多くの男のように家庭を背負うふりをしたり、仕事優先のストレスに陥らず、普段の生活と労働と踊りを見事に両立させながら、人生を見渡す豊かさを踊る女達から強く感じます。
器用に踊れない私は、飾らず懸命にダンスに向かう姿勢を恐らく求められていて、そんな心で素直に踊れた時、模範的な美とは異なる側面を与える可能性を託された肉としてのみ、この場に立つことを許されているのだと、果敢に踊る女達を前に、畏怖を感じ入る事が多いです。


後藤茂さん
同性でもなく、かといって異性とも思われていないからUNISEXな感じ。グルメ。踊りは人を美しくする。でも怖い。


玉邑浩二さん
はじめてダンサーズに出演します。
黒沢さんの公演は、何度か見たことがあり女性が多いということは知っていました。稽古場でもやはり女性が圧倒的に多く、なんだかそのパワーに押され隅に座ったりしています。けれど、それはまったくいやなパワーではなく、女性の強さみたいなものだな、と思います。時折、みんなで笑う声や、全員が急に真剣な目で踊りを見る視線がとてもまっすぐで居心地がいいです。女性のこの突き抜けたまっすぐさは、一人だけの女性ではなかなか出てこないと思います。たくさんの女性がいるからこそ、際立ってくるのではないかな?と思います。この稽古場ならでは、な感じです。
年齢層の幅があるのも面白いです。もちろん個々が違うのは当たり前ですが、同じ振りをやるにしても各年齢層の違いが見れて興味深いです。
男女関係なく稽古をする姿を見ると勇気づけられます。これからもっと勇気づけられ、たまに勇気づけていきたいと思います。


金子さんはダンサーズのニューフェイスだそうですね?

金子典子さん
ダンサーズの稽古場に通い始めて1年半。久々に会った友だちから「雰囲気変わったね!」とか、「元気だね、何があったの?」と度々言われます。逞しく瑞々しいダンサーズの皆さんについて行くのが精一杯の私でも、内なる変化が、微かに起き始めているのかもしれません。人間の苦悩は、私が私であると思う《イメージ》と、生身の《身体》が引き裂かれて在ることから生じるそうです。ダンスは、イメージと身体を《引き寄せる》心地よさを教えてくれます。


独身者が多いと聞くダンサーズの中で例外的に結婚や出産に踏み切り、新たな地点からダンスを見つめているお二人からもメッセージをお願いします。

長野れいこさん
「新たな地点」なんて大仰で、単にこれまでとは違う毎日を送っているだけと言ってしまえば身も蓋もありませんが、太々しくもメッセージを発信致します。ダンサーズの皆様、どうか私のために踊ってください。私“だけ”のためにではありません。表現することがメッセージたりうるのであれば、客席からダンサーズの溢れんばかりの書簡を受け取りに参りたいと思います。そして当面の間、私は月次ダンサーズとして、月に一度は稽古場で皆様に返信申し上げることが出来ればと願っております。


青山貴子さん
私にとってダンサーズの魅力の一つに、腹をくくる、というのがあります。
実は結婚も、腹をくくったり度胸が必要なのでした。
自分で自分の可能性に向かって進む覚悟なのです。
私の度胸はダンサーズで身に付けたものだと誇りに思っています。

写真:木村悟之

ダンサーズ初代部長の心境を伺いました。

須加めぐみさん
'99からダンサーズの稽古場に通い始めて、その頃から今のような大所帯の「ダンサーズ」がスタートしたので、気付けばすべての過程を知っていて、言ったことを積極的に忘れる美香さんに代わって仕切っていく存在になっていました。そんな状態が長く続いて、'09年にニュージーランドへ留学。語学留学だったのでダンスはほとんどせず英語での生活を謳歌し、帰国後もライフバランスに悩んだりしていてダンスから離れており、英語を活かした職場で働く中でご縁があり結婚しました。激動の数年間でした。
ふと久々に今のダンサーズが見たくなり「虫道」公演に行きましたが、あんまりよく分からなかった。これはやってみるっきゃない!ということで、4年のブランクを経ていきなり出演立候補したわけです。かつては知らない事は何も無い状態でしたが、今は知らないことばかりで、こんな環境をすごく楽しんでいます。「今の状況で一番楽しめる方法を見つける」というスタンスは今も昔も変わりません。今のダンサーズと今の私、どうなるか予測不可能ですが、トライしてみないと分からない経験なので、充実した時間です。


南さんは、ベテラン主婦/自営業者/踊る人、様々な顔をお持ちのようですが、どんな意識で踊っていますか?

南呼子さん
私の場合は生活があってダンスがあるということになると思います。ダンスする私はどうあがいても今まで生活してきた私でしかないのだから。ダンスするときは何も考えないのだけれど、体はそれまで背負ってきたもの、何をやってきたかが出ると思っています。だから生活もダンスといえばダンスです。



黒沢美香&ダンサーズ
85年活動開始。現在の「ダンサーズ」は多様な職種と特技を持つ舞踊集団で、年齢差は40才離れている者同士が一緒に踊る。ダンスの一般的な「見ごたえ」は取り省き、極々坦々としている。大群舞でうねる豪快ささえ静かで呆気無い。黒沢美香の基本姿勢であるミニマルダンスは異端であり続けながらダンスを普及していくことに挑戦している。「大きな女の踊り」本公演を2013年2月27日、28日、シアターΧにて上演予定。

ハッピーダンスプロジェクト進行中!



 ダンスがみたい!14 ~崩れる身体
黒沢美香プレゼンツ
■其の一
ミカヅキ会議
『渚の風』
衣装/武藤眞子

■其の二
黒沢美香&ダンサーズ
『大きな女の踊り』work in progress
音響/サエグサユキオ

8月22日[水] 開演19:30
会場 d‐倉庫


>>>「ダンスがみたい!14」公式サイト