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井田亜彩実 Asami Ida
「横浜ダンスコレクション R09」ファイナリスト、「NEXTREAM21」優秀賞、「Dance Creation Award」第二位、ベラルーシ国際コンペにて日本人初優勝、「芸創CONNECT vol.6」審査員特別賞。新潟中央高ダンス部で活動を開始し、筑波大で平山素子に師事。現在は「BABY-Q」や「いだくろ」として活動。9月よりイスラエルの「MARIA KONG dancers company」へ研修生として契約。 |
まずは、自分がどういうことがやりたいかを考えますね。そのために、いつも生活するうちに体験するふとした出来事を一つ一つ重ねていきます。例えば、満員電車にのってる時に、みんなが押し合ったり急がしそうにしていて、びくびくしたり、気を使っていたり、そんな些細なことです。逆に、『地球が今、環境問題で大変だから、それに向けてなにかしたい』など、大きなことは考えられません。
というのは、体験をもとにしているのは『どれだけリアルに感じていることか』です。体験したことだったら、そのとき環境や状況、自分の気持ち、これら実感したことをアイディアに落としこんでいきます。
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リアルな体験が作品のもとになってるんですね。それらをどうやって具体的に落としていくんですか? |
まず、どんな形でもいいから文書にします。キーワードだけでもいいし、とりあえず書く。落としどころは考えていません。たまにポエム的になりますけど(笑)あとは、書かれた言葉を考えながら、作品への意識が降ってくるのを待ちます。動きも構成も前も、練習する場で全部考えています。
やりたいことのイメージは持っていきます。あとは、ダンサーたちのキャラクターの設定ですね。
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それは作品に出演するダンサーたちに与えるキャラクター? |
両方ですね。自分からやってほしいものもあるけど、ダンサー自身が持っているものもある。その二つをすり合わせていく感じ。ダンサーが作品の中で一番良く見える形を考えます。みんな人形ではなく、それぞれの個性や、それを形成したバックグラウンドがある。それらを活かそうとしています。
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ダンサーの個性やキャラクターを活かすのはどうしてですか? |
『使えるものは使う』を常に持っています。作品は技術などが上手ければいいってものではないと思っています。というのも、私自身がうまく踊れないし、そのことで苦い思いをしてきました。だけど、それでもやらなければならないし、自分が持っているもののみで勝負をしてきました。
だから、踊り手にも同じ環境でやってほしいんです。仮に求めれるものが完璧にできなくても、自分にあるものを突き詰めればいいと思ってます。もちろん、求めているものが全てできなくてもいいとは言いませんけど。
私がやっているのはカンパニーではありません。毎回、初めて一緒にやるというダンサーが多いので、動きを統一させるよりは、そのダンサーごとの得意分野を活かせる形にしていく方が、作品をつくる上で時間的に早いというのもあります。
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先ほど、できないことで苦い思いをしたということをおっしゃっていましたが、どんなことがあったんですか。 |
これまでのダンス活動の中で、参加しているみんなで一緒に決まった踊りをするという環境に身をおいていた時期がありました。凄く踊れる子もいたし、いわゆるお稽古場に通っていた人たちがいたから、技術がある人達を活かした、決まった動きや演出をしていた作品が多かったんです。
当時は、この環境の中でなんかやらかしたいと思って活動していました(笑)。そのため、『作品がぶっとんでたけど、病んでるの?』と先生に心配されるような作品を作っていました。それは私なりのチャレンジだったんです。
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その時に作品を作る時に考えていたことはなんですか? |
ひねくれていたので、きれいな理想を語っているのは嫌いでしたね(笑)。若いながら、生きていくことはそんなに綺麗ではなく、人間臭いし、見苦しいし、そんなことを感じていました。代わりに、飾りっけがない、人間の本音に触れている時が好きでした。
舞台では、普段の生活にみせることできない、人間の本音の感情、弱みのような部分はさらけ出せることができる。そういった意味で心地よかった場所でしたし、それらを出せるような作品作りを考えていました。
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以前から物事の本質的な部分を追求しているように感じるのですが、いわゆる『理想論嫌い』はいつからでしょうか? |
実感したのは、実は最近ですね。2012年に「魚は痛みを感じるか」という作品を作った際に認識しました。でも思い返すと最初から自然と、人間ではないものをやることを決めている自分がいました。
昔から、容姿など自分の全てにコンプレックスを持っていました。そのため、人間以外になりたかったんです。そうしたらコンプレックスとか隠れるかと思って。
大学3年生時に初めて作品を作ったのですが、そのときは、人間以外の生き物に着目しました。例えば、虫は本能のままに、その日を暮らすために一生懸命生きているように見えました。振り返って人間は純粋に生きる以外のことについて必死に考えていることがあるように見えました。虫の方が、よっぽど生きることにストレートであって、こういったものを表現することで、「純粋に生きる」という、大事なものがあるということを観客に伝えるように考えていました。
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複雑に考える人間だからこそ、まっすぐに生きれていないという発想が面白いですね。 |
考える頭があり、社会があり、純粋になれる環境がないことを日々実感しています。傷つくことも多いし。往々にして、本質は怖くてねちっこいものかもしれないけど、そういう本音の部分にこそ人があると思っています。
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コンプレックを感じるようになったのはいつごろから? |
物心ついたころからだと思います。足は短い、スタイル悪い、デコが広いなどなど…。ダンスをやるなんて全く向いてない体型でした。
ダンスは、小学生3年生のバレエ教室に一瞬だけ通ったことがあります。はじめた理由は思い出せません。下手でしたし、飽き性で続きませんでした。中学校では、当時はバレーボールが世界大会やっていた影響でミーハーながら私もやろう思い、バレー部に入部しました(笑)お遊びだったけど、それなりにみんな一生懸命やっていて楽しかったですね。
中学3年の夏に、テレビでやっていたオール・ジャパン・ダンス・フェスティバル・イン・神戸を見たのがきっかけでした。そのときは、ダンスの伝統校である新潟市立新潟中央高校が特別賞をとっていました。そもそも、全国大会があるような大きな規模の中、学校でダンスができるというのを知り、強烈にやってみたくなったんです。
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それで受験して、中央高校に進んだんですね。高校時代の思い出は何がありますか? |
苦労の高校生活でしたね。入学早々にダンス部に入部したのですが、強豪校だけあって、経験者が多かったんです。そんな中、ほぼ未経験者だった私が出るチャンスをつかんだのが1年生の9月に行われたオーディションでした。そこで、努力すれば報われるということを実感しました。また図々しく、怒られるのも好きで、先生に向かっていって観てもらったことも今思うと上達した一因だったと思います。
この仕組みが部内にいい影響を与えていたと思います。オーディションというわかりやすい評価制度のもと、落とされないようにというプレッシャー、選ばれるようにがんばろうという意欲を持って、ほどよい緊張が部内には常にありました。
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高校で全国大会優勝1回、準優勝2回という輝かしい成績でしたね。その後、筑波大に進学したのですが、高校と大学では何が違いましたか。 |
1年生の時に『高校のような踊りはいらない』と言われました。違いについては、これにつきると思います。お稽古場あがりが多く、高校あがりの踊りしかできなかった私は出演する機会はあまり有りませんでした。
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そんな中、平山素子先生とお会いしたことで転機を迎えたのですね。 |
大学2年と3年生の時に1回ずつ振りつけてくれました。その時のリハーサルは今でも覚えています。
ダンスについての新しい考え方、難しい振り付けの中、できないとおろすといわれてビビっていました(笑)。しかし、多くの注意を受けましたが、私自身が否定されることはありませんでした。プラスになるようなアドバイスで、モチベーションもかなり上がりました。
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たくさんのことを学んで大学を卒業された後、東野祥子さんと出会われました。 |
ダンスを続けられてこれたのは平山先生のおかげです。そして、今の私のダンススタイルについては東野さんの影響が非常に強いです。東野さんを初めてみたのは大学時。『DANCE COMPANY BABY-Q』の公演で行われた『GEEEEK』という作品でした。タブーを犯しまくる作品観と東野さんの人間ばなれしたダンスに衝撃を受けて帰ったのを覚えています。同時に人体の不思議さと人間以外の動きと感じられるような動きを追求することで、これだけ人を魅了することができるというのを知れました。綺麗ではないけど説得力があり、デタラメだったけど何が起きるか分からないワクワク感がありましたね。
とりあえず、大きな舞台をうってみたいですね。大きな会場で、おおきな舞台装置を使いたいです。大きな劇場の客席が自分の作品で埋まるって、どんな気持ちになるんでしょうね。想像もできません。だからこそいつかやってみたいですね。
≪インタビュー&文章:石井雄基≫
次回公演
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「ダンスがみたい!15」参加作品
「新人シリーズ 11」オーディエンス賞
8/20(火)&21(水)
21日のみ15:30&19:30
出演/江口太陽、香取直登、黒須育海、仙田麻菜、豊永洵子、中村理、井田亜彩実
音響/相川貴 照明/久津美太地 衣装/田村香織
「ダンスがみたい!15 ~そろそろ、ソロ?~」
進化し続けるダンスの祭典「ダンスがみたい!」は今回で15回目。今回は「ソロダンス」をテーマに6人のダンサーに光を当てる。恒例の「新人シリーズ」受賞公演も。ダンスの根っこを顧みて創造力の源を目撃する!
[会場]日暮里d-倉庫
[料金]
前売り2300円(学生2000円) 当 日 2800円(学生2500円)
3回券6000円(学生5000円) 通し券11000円(学生9000円)
[チケット取扱い]
カンフェティ >http://www.confetti-web.com/
d-倉庫 >http://form1.fc2.com/form/?id=535324
03-5811-5399
>azabubu26@ybb.ne.jp
■主催/「ダンスがみたい!」実行委員会
■共催/d-倉庫
>「ダンスがみたい!15」ホームページ
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