川村美紀子 × 西村宮葉 スペシャル対談
photo©Marie Nosaka
テーマ
1. 芸術と虫
2. 流行について
3. 大人と子供
4. ダンサーになる
(ピンク=西村 グリーン=川村)
――何話せば良いのか、、舞台芸術か。
舞台芸術についてじゃあ話しましょうか。
――分かった。舞台芸術って何だ?
何だろうね、とりあえず何か調べてみよう、舞台芸術、、
――じゃあ私も調べよう。
ウィキペディア。
――あっ、何か虫死んでる!何かね、今メガネ屋さんで働いてて、うちの店舗、すーごい狭いの。
町田の?
――そう、でも南町田だから、町田とちょっと違くて、家は町田なんだけどすんごい狭くて。だからフロアに店員がいるだけで圧迫感大ありなの、すごい話しかけられそうみたいな。
あそう、何、じゃあこれぐらい?
――いや、そんな狭くないけど、ここのお店よりは狭い。
あっそう、
――あっちだけのスペースぐらい。
あぁ、
――結構狭くて、
メガネ置いてあると結構あるかもね。
――そう、で
舞台芸術、
――え何?急に。
ウィキペディア、難しい漢字がいっぱいある。
――あそう、それでね、メガネ置くとこ白いから、装飾が、すごい虫が入って来て、ヤバいの。
あぁ~暑いとね。
――ちっちゃい虫いっぱい死んでる、何か最近、対になってる虫がいるの。
え?交尾してるって事?
――ううん、でも明らかオスとメスなんだけど、何かね、色で言うとピンクの虫がいて、そしたら絶対それの虫の向かい側に、ミドリの虫がいるの、何かこういたらこういるの。
へぇ、
――例えば壁とかにこうやって止まったら、こうやっているの絶対。角度絶対こうなの、こういう時は無くて絶対こうなの。
本当?
――そう、でもそれが何だかよく分からないの。
何だろうね?
――すごいね、不思議なんだ。
同じ種類?
――同じ種類。たまに普通のハエとかいるけど、けどその虫がいるの、でも今まで見た事ない、私生きてて。
私も初めて聞いたよ、そんな話。
――だから何か、すごい不思議だった。写真とか撮っても、何て調べれば良いか分かんないから、、
確かにね「対の虫、あります」みたいな?
――対の虫、、すごい、でも朝とかになったら死んでるんだけど、死んでる時は片方だけとか、両方で死んでる時あんまないんだけど、よく分かんないんだよね、何なんだろう?どうやって調べれば出て来るのかが分かんない。
そうだね、
――「オスとメス、虫」とか?
何か画像でさ、検索出来るサービスあれば良いのにね。
――ね!何かピッって撮ってさ、
そうそう「これ何ですか?」みたいにね、それを添付するだけで、検索結果が出て来るみたいな。
――あぁ良いねぇ~。
ね、ありそうだけどね。「この曲なんだろう?」っていってさ、録音してやるのはあるじゃん。
――ね!あったよね。
ね、画像は無いよね。
――確かに、そういうのは機械が判別するけど、画像はやっぱり見なきゃいけないからかな?
そうだよね、機械が認識しなきゃいけないからね。それを、何だろう?って、それは難しいかもしれないね。
――何だろう?絶対出て来なそう、何かおじさんとか出て来そう。
「何でこの検索ワードで、こんなの出てくんだろう?」って時あるよね。
――ある、そういう虫とかってやっぱり昆虫図鑑とか見なきゃいけないのかな?
うーん、じゃないかな?虫って言ったっていっぱいあるからね。
――ね、絶対分かんないよ、やめた。私今、昆虫について調べてた、芸術について調べなきゃ。
昆虫と芸術って何か、近いかもよ。
――確かに。
何か虫ってすごい気持ち悪いじゃん見て、
――うん、
ゴキブリとか、わぁーってなって恐いけどさ、綺麗じゃん足の配置とか。
――そうだよね、
だから恐いんだろうなって思う。
――確かに。
ね。
――分かんないや、何か調べても。
――最近さ、お腹見せファッション流行ってるの知ってる?
知らない、お腹見せ?
――何か服がお腹で途切れてんの。
また戻って来た?古い、時代が1周回って来た?
――前流行ってたんだ。
前、流行ってたんじゃない?
――そう、何かね、ここまででヘソ見えてんの。
へぇーそれってさ、ちょっと残念だったらちょっと、嫌じゃない?お腹すっごい出ててさ。
――そう!私この間ね、妹の雑誌読んでたら、どれも丈が短くてヘソ見せ。「え?!こんなのあんの?」って言ったら、妹は「いるよ?お腹出してる人」って言ってて「私、町田で見た事無いな」って話をしてたの、そしたらその次の次の日ぐらいに見て、町田駅で。若い子だったけど、妹にメールしたの「出してる子いたよ今!」って、そしたら「ほらね」って来て。妹も今日見たって言ってたから、「えーどうしたの?『お腹出てるよ』って言った?」って言ったら、「めっちゃすごい太ってる人だったけど、言うわけ無いじゃん、試食あげといた」とか言って、妹はバイトでアップルパイとか売ってるから、その試食あげたらしい。
気付くと良いね(笑)
――皮肉だよね、でも何かさ、残念な人もいるんだなと思って。何で出そうと思うんだろう?お腹冷えちゃうよね。
うーん、流行ってるからじゃない?
――流行だからか。
流行ってるって恐いよね、何も考えないでいいもんね。
――「今流行りだし」でいいもんね、「今流行りだから踊ろうよ」みたいなのとか来ないかな?階段の2段目で絶対踊っちゃうみたいな。
はい、2段目キター!って?(笑)
――みんな2段目で絶対踊ってるの(笑)
何か有名な人がやればさ、きゃりーぱみゅぱみゅとかがやればなるんじゃない?
――ね、若い子がやれば流行るかな?どうすれば流行るんだろうな?、、別に流行らせたいわけじゃないけど。
いっぱい流行ればいいってもんじゃないしね。
――何かわけわかんない人達がさ「ウェ~イ」とか言って公演とか見に来てもさ、それちげーよ、とか思う。
確かに、色々理解しようとするからかな?見て。
――そうかもね、みんなでも大体何も考えてなさそうだよね。
きっかけが無いと、あんま考えるの出来ないよね。何かね、この前アウシュヴィッツに行ったんだけど、私全く知らなかったのアウシュヴィッツとか、あんまり、白い巨塔で見たぐらいで。
――うん(笑)
すごかった、もうさ、すごい考えちゃって、何も言えなくて、3時間いたけど、5言ぐらいしか出て来なかった。
――へぇ、
あの、ヒトラーがすごい、何か、普通にさ人がさ、例えばガスで人を殺す時に、ガスを買ってとかさ、ガスを入れてーとかやるじゃん。そういうの何か、罪悪感あるじゃんそんなん、あたりまえでしょ?でもそれを、えっと、全部数値化して、仕事って感じなの、じゃあガスを買って、入れてっていうのを、ユダヤ人、、その、心が痛まないような仕組みを作ったんだって。
――えっ?!どういう事?
ごめん、うまく説明出来ないや。とにかく罪悪感なしで人を大量に殺せるシステムが出来たわけだ、ざっくり言うと。
――うん。
それで私、日本に帰って来てニュースみたら、看護学生の女の子がさ、授業で検体か何かで来た臓器を写メって、ツイッターに「グロ注意❤」ってのせて、めっちゃ叩かれて、退学になったじゃん。
――そうなの?知らない。
じゃあ2ちゃんねるか、それ見て、確かにさこれ、何も考えないでさ「わぁー内臓がヤバい!」みたいな感じで何も悪気無いじゃん、倫理的にいかんしさ、あぁ繰り返してんなって思った。
――確かに、何か感覚が麻痺してるのかな、、わっ!って思ったんだろうね。
うん、でもその人は反省の文が出てた。けど何かその、知らない間にコントロールされてるっていうか、恐くないか?うまく言えないけど、
――ね、そうだね。それが正しいかどうか後で分かるかもしれない。ヤバいね、確かに、
だからもっと自分で考えなきゃいけないって思うんだけどさ、中々無いよね、あぁいう場所に行かなきゃ自分からさ、考えようなんて思わないもん。
――時間と場所が無いと、中々考えないよね。
だからみんな考えなくていいから、色んなものが流行るのかなって話でした。
――うん、そうかもね、何か自分だけ違う考えを持っちゃうのが恐いんじゃない?否定されるからみたいな、だからあんまり誰も賛同してくれる人がいないと、恐いっていうのはあるんじゃない?やっぱり一人になりたくないっていうのはあるんじゃない?
でもそれって日本人だけなのかな?
――何か日本の人ってさ、例えば色んな国の人が船に乗ってて、『女の人が見ていますよ!』って言うとイタリア人は飛び込んで、『英雄になれますよ!』って言ったらアメリカ人は飛び込んで、日本人は『みんな飛び込んでますよ!』って言うと飛び込むんだって。
面白い(笑)
――コピペか何かで見た。
日本で死刑する時とかもさ、5人くらいが一気にボタン押すのとかあるよね。
――へぇ!
――私、視力検査も出来るの。
えっ何?
――視力検査。
あぁ、メガネ屋さんで?
――うん、視力検査とかもするんだけど、「今ので0.7ぐらいですね」とか、「これぐらい見えてたら、学校でも黒板の文字とか、後ろの席からでも見えますよ」みたいな感じで親子に言ったりするんだけど、お母さんとかって「他のお子さんはどうなんですか?」ってすごい聞く。
へぇ。
――自分の子供の話とか全然聞かないで、例えばどのくらい見えてるか測る時ね、いきなり何段階も強くすると、目が疲れちゃったりするの。「ちょっとクラッとしますね~」ってその子と確かめながらやるんだけど、お母さんに「急に上げちゃうと疲れちゃうので、これで0.5ぐらいですね」って言って。そしたら「他のお子さんどうなんですか?」って聞かれて、「まぁ一般的には0.7見えてれば、文字とかは問題ないですね」とかって言うと「ホラ、あんた、0.7は見えるようにしようよ!」って。でも子供は「これ以上にすると強いから嫌だ」って感じなんだけど「みんながこうだから」とか、子供が言う事っていうよりは世間体、、っていうわけでは無いけれど、何かこの人は子供を目の前にして、何を信じてるんだろうと思ってすごい恐くなった。
おぉ、
――そう、何か大人とかなら自分の事だから分かるじゃん、でも「子供だから分かってないんだ」っていう親が多いんだなって思った。結構そういう感覚的なものってその、何かね、分かんない人は分かんないよ。
そうかもね。
――30代の男の人が、明らか70代ぐらいのお母さんとか連れて来て、「お会計こちらでーす」って言うと「ちょっと、お母さん」って財布出してもらって、お金出してたお母さんとかがいるから「マジか!」って人とかもいる。
へぇー!
――うわぁ~って思ったりする、すごいよね、そういうのもさ、崩壊してんなーって思う。崩壊してるよね、何が大人なのかよく分かんない、そういう人が全部母親のせいとかにして殺しちゃったりするのかなとか思って恐かった。
確かにね、
――すごいよね、親子で来て揉めてる人とか結構いるから、子供が「それで良い」ってならないんだって、すごいな~と思って、「周りはどうなんですか?」って。
うんうん。
――あぁ、あとランキングとか、お店に一応置いておくの。場所が余ったから「この店では1位はコレ!2位はコレ!」っていうのを置いてて、1位は本当に1位のを置いてたんだけど、「本当にランキングの効果があるのか?」と思って1位のものを2位にして、全然10位にもランクインしてないやつを1位にしてみたの。
うん。
――次の週、それが3位ぐらいになってた。
うそ!
――それが良いか悪いかじゃなくて「これランキング、1位だからこれで良いんだ」みたいな。「これ1位ですよね?じゃあ買ってきます」みたいな人もいて、ヘェーって感じする。自分の「良い」とかじゃなくてやっぱランキングで買っちゃう、
何か本当に良いものを自分で決めてるのか、分かんなくなっちゃうね。
――うん、ランキングのお店とかあるじゃん、あぁいうのもさ、粗悪品でも1位に置けば売れるんだろうなとか思いながら。
うんうん。
――ランキングって逆にさ、誰も信用出来ないよね。本当に美味しいお店とかだったらランキングで知りたいなと思うし、行ってみようみたいなそういう話題にもなるけど「これ明らか2位じゃないでしょ!」ってやつとか2位にしてみたら、それがやっぱり売れたりとかする、すごいよね。
すごいね、
――人って、、って思った。あっ、ヨダレ垂れちゃった、
――なんか結構さ、大学に「ダンサーになりたい!」って思って入って来ても、4年生ぐらいで随分少なくなっていきそうだよね。
そうだよね、ダンサーって言っても色んなのあるしね。
――何かさ、ミキティ「どういう風にしたら食べて行けるかっていうのを、教えてもらえなかった」って言ってたじゃん、そうだなっても思うし、そういうの自分で見つけるべきだってなった時に、大学とか入んないで専門とか、それか専門とか入んないで自分でカンパニーとか見つけてとかいうのもあるけどさ、結局何なんだろう、、結局自分でっていうのもあるんだろうなって。自分にそれをさ、見つける素質があるかどうかって感じじゃん?
あぁ、そうかもね。
――やっぱりそれまでだったって思うのかもね、4年生になって。レゾナンスのリハとかでもさ「この後どうやって動けば良いんだろう?」って分かんないの、3人でコンタクトとかずっと動き続けなきゃってなった時に「この2人が動いてるから、その間に私はどういう風に動けば、どういう風に見えるんだろう」とかいう思考が全く動かなくて、結果私あんま動いてない。
そっか、
――そういうのやっぱり、自分で考えなきゃいけないなと思う。っていうのもあるし、、
そういうのが感覚的に出来ちゃうんだろうかね、ダンサーは。
――ね、やっぱりレゾナンスのダンサーは見ててすごいなっていうのはあるけど。
モチベーションをさ、多分本当にすごい人ってモチベーションの事とか考えないだろうけど、
――あぁ、ポンポンポンッって何か。
モチベーションがないんだよね、
――へぇ。
何か今さ、ありえない感じですごい、恵まれてるっていうか、何でこんな、すごい人達が私に関わってくれんだろうって感じなの、本当すごい、環境の中にいて、
――ミキティ今、売り出されてるよね。
分かんないけど、すごい虚しくなっちゃって、頑張れないんだよね。
――今、飽きてるのかな?
飽きてるのかな、、必要とされると「よしっ」てなるんだけど。贅沢だよね、何か、前まで鏡とかある所があったらさ、ちょっとでもどういう風に動こうとかさ、何かやろうとか思えたけど、もう今何かスタジオ行っても、はぁってなっちゃうっていうか、4時間ぐらいずっと泣いちゃってたりして、
――へぇ、前まで5時間ぐらい練習してたのに、
そうそう、何かそれも、だから今走ってる、6キロぐらい。
――えっ(笑)
何か本当、ダンス下手だし、やる気無いならやめろよって感じだしさ、クソだよ。
――うん、ミキティに初めて出会った時、何かすごいやる気に満ちあふれた感じだけど、すごいヘタクソだし(笑)手とかすごいこんなんなってるけど、すごいやろうとしてる、しかも髪短いし、なんなんだあの人(笑)と思った。
(笑)
――あの時はすごい強そうだったけど、今へなちょこパンチでも倒れちゃいそうだね。
うん、でも私のモチベーションはあんま重要じゃなくて、しかもそういうの出しちゃうと多分、仕事無くなるよね。
――そっか(笑)
今にも「助けてくれー!」みたいな事を大声で言いたいけどさ、それだったら自分が生きて行けなくなるじゃん、ダンスという手段で。
――まぁ確かに(笑)そうだね、ダンスを仕事にするのってそういうの、大変だなぁ。
ね、それは分からなかったよ。
――でも自分の身が商売道具だもんね、
ね、だから私はさ、身体を売って、何か、何だろう売春と、売春をしてお金をもらうのと、ダンスをやってお金をもらうのは、何が違うんだろう?ってずーっと考えてるけど、結果一緒なんだよね。
――まぁ確かに一緒だね、自分の身体、それがただ1人か、もしくは大勢かって感じだよね。
うん、何か犯罪じゃないけど、すごい合法的っていうか、
――1人、1人じゃない場合もあるか、確かに、、確かにそうだろう、ミキティがずっと考えて見つからないなら、私が今ホイッと考えるのは絶対に違うと思う。
いや、案外ホイッって感じで、見つかるもんじゃないかな、
――そうかな、うん。
うん、ね。
(2013年7月 渋谷の某カフェにて)
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川村美紀子 Mikiko Kawamura
日本女子体育大学舞踊学専攻卒、1990年1月19日生まれ。横浜ダンスコレクションEXで新人賞を受賞後、国内外で作品を発表している。西村宮葉とは松山善弘主宰「カンパニーレゾナンス」の稽古場で出会う、西村の事は「みやは」と呼ぶ。 >www.kawamuramikiko.com
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西村宮葉
日本女子体育大学舞踊学専攻卒、1989年11月2日生まれ。東京都、町田のメガネ屋で働きながら、松山善弘主宰「カンパニーレゾナンス」のダンサーとして活動している。川村美紀子とは同カンパニーの稽古場で出会う、川村の事を「ミキティ」と呼ぶ。たまに絵も描いている。
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*川村美紀子と西村宮葉の共作はこちら→ artissue「前衛くん」
(左:西村宮葉、右:川村美紀子)
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