|
ブレヒト、イヨネスコ、アラバール、寺山修司、サルトル、ベケット…現代の著名な劇作家の作品を一本取り上げて、その戯曲だけを連続で上演する「現代劇作家シリーズ」第7弾。今回は別役実の戯曲『正午の伝説』をピックアップ。4人の男女によって生み出される不条理の世界をどのように捉えるか!?日本の不条理演劇を確立した別役実の世界に演劇・ダンス・パフォーマンスなどのジャンルを超えた全10団体が挑む!
会場
d-倉庫
荒川区東日暮里6-19-7 日暮里駅南口より徒歩7分
> Access
料金
前 売2500円 ― 学生2200円
当 日2800円 ― 学生2500円
通し券5800円 ― 学生5000円
★学生は要学生証
★通し券はd-倉庫のみで販売
予約・問合せ
d-倉庫 > d-soko@d-1986.com
03(5811)5399 (月曜定休18:00~23:00)
チケット取扱い
下記アドレスから予約後(要登録・無料)、セブンイレブンですぐ発券。
> カンフェティチケットサービス
簡単予約フォーム
●このフォームでは公演の予約できます。公演日受付にて料金をお支払いいただきます
●満席になった場合、予約を受け付けられない場合があります
●予約フォームでの申し込みは、公演日の2日前まで受け付けます
●は記入必須項目になります。
|
|
|
2017.4.25 [火] ―
5.9 [火]
開演 7:00 PM
※4月29日(土)&5月2日(火)&5日(金・祝)14:00&19:00
※開演60分前より受付開始,30分前開場
※開演時間を過ぎますと,入場できない場合があります
4.25|火|― 4.26|水|
アムリタ . P-Farm
4.28|金|― 4.29|土|
Empty-Kubrick . 楽園王
5.1|月|― 5.2|火|
劇団じゅんこちゃん . しおめも
5.4|木・祝|― 5.5|金・祝|
IDIOT SAVANT theater company . トレモロ
5.7|日|― 5.8|月|
激弾ショット . 劇団820製作所
※各日程2団体による「正午の伝説」2本立て上演
※2団体の上演順は未定
※4月28日(土)&5月1日(月)&4日(木・祝)のみ終演後に2団体によるアフタートークを開催します
「別役実『正午の伝説』について」
5.9|火| 開演7:00 PM
入場料500円 ※入場半券で無料
フェスティバル参加団体が、戯曲に対してのそれぞれのアプローチの違いなどを端緒にして『正午の伝説』について言及していく。
※都合により参加できない団体もあります
主催.....die pratze
共催.....d-倉庫
「正午の伝説」
作.....別役実
使用テキスト.....別役実第四戯曲集「数字で書かれた物語」(三一書房)より
舞台監督......田中新一(東京メザマシ団)
音響......相川貴,許斐祐, ATS企画
照明......久津美太地, 三枝淳,針谷あゆみ,ATS企画
映像......workom
協力......相良ゆみ, 福岡克彦, 高松章子, 磯部豊子, 山口ゆりあ, 吉村二郎,
OM-2,「ダンスがみたい!」実行委員会
宣伝美術......林慶一
記録......田中英世(写真),前澤秀登(写真),船橋貞信(映像),Vitek
監修......真壁茂夫
企画制作......金原知輝,林慶一,てとら
|
|
4.25|火|7:00 PM, 4.26|水|7:00 PM
|
アムリタ
-「利賀演出家コンクール2014」奨励賞/受賞-
12年、演出・荻原永璃を中心に、主に演劇をするための機会・あつまりとして活動を開始。古典戯曲から個人史まで様々なテキストを人称や配役に囚われず柔軟に再構成し、多様なイメージを結びつけ再生する。イレギュラーな上演環境や多面客席を効果的に使用し劇場の内外を問わず精力的に活動を続けている。
amrita.pray@gmail.com
これは不条理劇だろうと仮定する。不条理劇とは何か。荒廃した現実がスタート地点となること。不毛な会話、無意味な行動、非論理的な展開。状況は既に行き詰まっており、打開を望む試みは徒労に終わる。物事を合理的に解決することはできない。因果律は崩壊する。「人間は不条理な存在である」現実は不条理だ。だから不条理な演劇は現実の写し鏡たり得るだろう。鏡によって自らを見直す時、新たな発見があるように、この観劇も私やあなたの生活に新たな光を・あるいは影を投げかけることになるだろう。眩しい正午の光が足元に真っ暗な影をつくる事を考える。ポッカリと口を開けた真っ黒な穴、誰の足元にもあるのに気が付かれないそれらのこと。それは過去なのかもしれない。現在を生きれば生きるほどいや増すのに見えなくなってくる影たちのこと、誰にでもくっついているそれら。ふと反転して逆襲するかのように主張しはじめる影たちの時間としての、正午の伝説。わたしたちは責任を問われる、いや、どのような態度を取るか迫られる。向き合うのか、逃げるのか、存在しないものとして無視するのか(しかしそれはいつでもそこにあるのだ)。わたしたちはこの戯曲を提示され、上演することを選んだ。そのために今日ここにいる。だから上演しなければならない。あなた方の目の前で演劇をする。舞台と客席の間に、正午の伝説を出現させ、共有する。あなたとわたしたちはこれからそういうことをする。見たくないものが見えるかもしれない。聞きたくないものが聞こえるかもしれない。強い光に照らされて、舞台にそれらがさらされる。条理の世界は既に失われた。既に無く、これからも無い。状況は改善されない。すべては刻一刻と悪化する。どうすることもできない。しかしそれでもそのどうしようもなさを繰り返し続けなければならない。それが不条理な現実に対するせめてもの抵抗となるはずだから。たとえ世界が壊れていても、壊れているからこそ抵抗し、し続けなければならないのだ。それが、わたしたちの機能である。
|
|
P-Farm
演出=一川靖司 出演=磯貝誠/五十嵐弘/奥野雅俊/立直花子
「P-Farm」とは、08年に「木山事務所」の所属俳優・スタッフが中心となって設立され別役実作品を中心に福田善之・松田正隆・竹本穣・石原燃などの旧作・新作を上演している「Pカンパニー」の内部ユニットです。今回は若手メンバーで新たな発想のもと独自の舞台創りを目指します。
p-company.la.coocan.jp
改めて云うことでもないが、別役さんは天才である。
平易な口語表現でありながら緻密な計算のもとに台詞が成り立っている。
その平易さゆえに役者たちは、しばしば自分の言い易いように変えてしまい、表面的には成り立っているように思えるのだが、微妙なニュアンス等が違ってきて、下手をすると何を言っているのか分からなくなってしまう。
「あれ」や「それ」などの指示代名詞や同じような言い回しの繰り返しがあり、覚えるのに苦労はするが、私の演者としての経験で言えば一語一句台詞通りの方が最終的には喋り易くなると思う。しかも、論理性も高くなり、観る側の想像力も刺激する。
それほど完成度の高いことばなのだ。
今回の芝居には「傷病兵」という特異な人物が登場する。この存在は佇まいだけで強烈な印象を放ち、そこには戦後論や天皇制などの大きなテーマ性が潜んでいることは理解できる。
しかし、わたし如きが深く考察しても良き解釈など生まれそうにない。
そこで原点に返り、戯曲を信じ、別役さんのことばを誠実に具体化することで傷病兵に託した思いを浮かび上がらせられないかと考えている。
一方、「男」と「女」という登場人物に関しては書かれた70年代では実在感が薄くとも、現代ではどこかにいてもおかしくない人物として捉え表現できそうな気がする。
このふたりの存在にリアリティを与えることこそ、今回の挑戦であり、時代を超えた別役作品の普遍性を感じたい。
別役ことばに忠実に取り組み、稽古を重ねることで新たな発見ができればと思っている。
|
4.28|金|7:00 PM, 4.29|土|2:00 PM & 7:00 PM
|
Empty-Kubrick
-「若手演出家コンクール2015」優秀賞/受賞-
出演=歌川翔太/内田斗希央/久保田舞/近藤千紘/田中朝子/中村駿/山口将太朗
15年に設立されたダンスカンパニー。山口将太朗が構成/演出/振付を手がける。ロジカルな振付と破壊的な群舞、そして空間を歪ませる構成変化が魅力。
emptykubrick@gmail.com
©bozzo
4名の男女による不条理劇。
今回はその4名の出演者に加え、男女3名を追加した合計7名で『正午の伝説』を演じることになります。我々はダンスカンパニーであるため、身体および視覚的目線から今回の戯曲に取り組みました。
戯曲をどうダンス化していくか。今回初めての挑戦であったため、シンプルに戯曲で起きている事柄を我々が持つ「身体言語」に転化していくことにしました。行動、関係性、場面など、セリフとダンスのより良い共存を模索しながら創り進めました。
ダンスが持つスピード感を失わないため、一幕、二幕を同時に進行し、三幕はセリフを使わず、「身体言語」で振り切る構成です。
そのように今回の創作過程を続けて来ましたが、「これが今回のテーマであり、ゴールだ」というものはありません。戯曲を読んだ感じ方、考え方がそれぞれであるように、作品の感じ方、考え方もそれぞれで構わないと思っています。それを助長するのが、男女4人以外に現れる3人の男女。彼らはこの作品において何をもたらしているのか。いろんな捉え方をして、作品を楽しんでもらえたらと思っています。
不条理なダンス×不条理な戯曲によっておこる化学変化を、空間全体で感じていただけると幸いです。
|
|
楽園王
-「第5回利賀演出家コンクール」優秀演出家賞/受賞-
-「利賀演劇人家コンクール2015」奨励賞/受賞-
演出=長堀博士
「楽園王」は長堀を中心に91年に旗揚げ、17年には26年目を迎える。その演出の特徴は、音や言葉遣いに独自のルールを設けることで、物語やテーマをデフォルメして「分かりやすく」する点にある。「耳に聞いていて心地いい演出」と評されることも多い。
home@rakuenoh.tokyo
稽古の最初の段階で、出演者のために演出プランを文章化して渡すのが習慣化している。出演者のため、と言っているが、実は演出についてを文章化するのは思考の精度をぐっと引き上げ、指針を作り、自分にとって役に立つ。おかげで、稽古の最初の段階で方向性が決まる。今回は渡す台本の頭にページを割いて文章を書いた。以下、それを紹介したい。まだ稽古を一回もやってない段階に書いたもの。
「演出プラン。まず最初に、この戯曲の中に出てくる「君が代」を歌う場面が、フェスの他の演出家にとっては他の曲への変更箇所になるのではないか、そう考えた。他の演出家、と書いたが、自分も他の曲への変更がありなのか、ならばどんな曲なら行けるか、漠然とだが考えなくはなかった。しかし、この上演がある今現在、目の前の社会がそれを許さなかった、今ではそんな風に考えている。この古い戯曲に現在進行形の現代性を演出的に感じさせるプランの一つとして、瑞穂の国記念小学院、通称、安倍晋三記念小学校を卒業した生徒が、その後どんな人生を歩むのか? それが「正午の伝説」から感じ取れたらいいなと考えた。かの学校は様々な問題から開校が実現しなかったが、森友学院の幼稚園の映像から感じ取れるのは、彼らの考える正しい教育とは(正しい日本人とは)、兵隊を育てる教育なのだな、ということ。彼らの考える礼節も技能も知識も、従順な日本兵を生み出す方法にしか思えない。(それは又、テレビで見かける北朝鮮の国民にも似ている)今、まさに機を得て、この国で現在進行形で起こっていることを考えるに、「正午の伝説」は単なる不条理劇ではなく、一つのこの国のあり方を考える切っ掛けにもなる、そんな風に考えた。押しつけがまくしなく、ユーモアを伴って。
また、もう一つの演出プランとしては、「うんこ」とは何か?、それについてはやはり現在では、執筆当時とは生物学的に異なっているので、ハッキリとさせたいと考えた。それをハッキリさせることは、この作品を結果的に豊かにするだろう。演出とは、つまりは上演とは、単にその作品を紹介するだけにとどまらず、作品への敬意を持ちながらも、批評性を持って作品を「越える」ことでもある。「正午の伝説」を様々なカンパニーが上演するフェスティバルの中にあって、幾つかの演出的な工夫によって、その中でも最良の上演が出来たら良いと思う。」
正午の伝説について 長堀博士
|
5.1|月|7:00 PM, 5.2|火|2:00 PM & 7:00 PM
|
劇団じゅんこちゃん
演出=豊永純子 出演=福屋しし丸(フクヤクラス) 他
ゲーテ作『ファウスト』を原案として、STAP細胞の研究や妖怪ウォッチ人気の背景など現代社会の分析を取り入れた『ファンタスティック☆ファウスト』にて旗揚げ。その後劇団員は演劇から足を洗い、現在は豊永がひとりで運営している。劇団名は「じゅんこちゃんが旗を掲げた」ただそれだけの意味である。
gekidan.junkochan@gmail.com
|
|
しおめも
構成・演出・振付・出演=石山優太 出演・振付=中山貴雄 他
「しおがおのしおめん」こと石山優太が主宰となり12年に結成。ダンスとも演劇ともつかない独自の体育的舞台を展開。このフェスティバルには13年の「戦場のピクニック」以来二度目の参加となる。
shiomen1984@gmail.com
©山崎優也
この企画には四年前のアラバール『戦場のピクニック』にも参加させていただきました。その時に感じた「戯曲、そして、不条理というものを自分達のダンス的、体育的手法で表現できた!」という成功感覚を拠り所にこの『正午の伝説』のクリエーションに入りました。しかしながら今回はそうはうまく行きませんでした。僕、石山が自分の活動の中で演劇や、舞台上で言葉を発するということに慣れてしまったこと、僕たちの手法では「ダンスで表現できる!ここでこうやったら楽しそう!」と思える場面が作中に極めて少なかったということが理由として考えられます。また、それをダンス的なもので表現しようとした時、どこかで観たことのあるものになってしまう気がしてならなかったのです。不幸中の幸いとも言うべきでしょうか、僕たちは戯曲を解釈し本を書き直すほど、専門的に言葉を扱う人間ではありません。しおめもとして、この作品を戯曲に沿って表現するということを諦めた時、この不条理劇の面白さを表現するには、もう一つ視野を広げなくてはならないという考えに至りました。そして、そのことが「正午の伝説」をより客観的に、楽観的に捉えさせてくれました。この作品を既にご存知の方もそうでない方も、僕たちの捉えた「正午の伝説」そして「不条理劇」を楽しんでいただけたら幸いです。
|
5.4|木・祝|7:00 PM, 5.5|金・祝|2:00 PM & 7:00 PM
|
IDIOT SAVANT theater company
演出=恒十絲 出演=朱尾尚生/近藤康弘/新井千賀子/三浦寛士/加川望 他
「第三エロチカ」出身の恒十絲が02年結成。13年には12時間芝居×5回公演を敢行。恒十絲の詩・テキストを基軸に、独特な身体表現と映像を融合した高い独創性のある舞台が評価されている。劇場に限らず廃映画館や寺院を発表の場に、「TPAM」等にも作品を出品。16年パリにて『東北―11年目の足音』を発表。
idiot.savant@nifty.com
僕たちは、面倒くさいと思われがちな劇団として、前身も合わせれば15年くらい活動を、続けてきた。居ないやつがいれば、そいつの話が毎日の酒の肴になるのだ。それだけ、ずーっと一緒にいる。とにかく、いい奴らで喧嘩などしない。つまり、僕と始終、顔を遭わせている訳で、喧嘩にならないということは、彼らが、僕を上手く操縦しているのだろう。
そんな彼らと、いつもの作業をする。即ち、戯曲の解釈だ。
「WHY」の連続は、私たちの好む劇世界なのだろうか。
正午の伝説ってなんで、こんな題名なのとか、排泄を我慢してきもいとか、今日の若者が、大笑いする。そのまんま、3週間すぎた。けれども文献やら、別役さんのエッセイやら、山になった資料は、この戯曲もまた、僕たちの人生を豊かにしてくれているのだと、有難さで一杯にさせてくれる。
この繰り返しが、誰かと誰かのあいだの極上の酒の足しになる訳だ。堪らないひと瞬きが確かに或る状態のように生まれる。泡沫の愉悦を劇団としてまだまだ、楽しみたいものだ。
行きつけのラーメン屋のおやじさんが言った。また、ばたばた身体!動かすんですか!
今日あたり、酒を飲みながら愛すべき彼らと話そうか。ハイボールを飲みだすまえに。
「WHY」の、賞味期限があるのならば。
|
|
トレモロ
-「利賀演劇人コンクール2015」優秀演出家賞・観客賞/受賞-
演出=早坂彩 出演=えみりーゆうな 他
10年結成。T・ワイルダー『楽しき旅路』、W・シェイクスピア『ハムレット』など、多くの翻訳劇を演出、上演してきた。『イワーノフ』では、空間演出とテキストレジの手腕を高く評価される。演出の早坂は、現代口語からミュージカルまで、
精緻かつ鮮やかな舞台演出を手がけている。16年には、別役実脚本の一人芝居『もうひとりの飼主』を演出・上演した。
tremolo0tremolo@yahoo.co.jp
©福島奈津子
演劇の得難い瞬間とは、机上で書かれた誰かのイメージが、絶対に同じ考え方など持たない多くの人々の肉体や思考を通して、空間に立ち現れる瞬間だと思っています。
近頃、演劇を作ったり、労働したり、いろいろな人と接しながら、日常生活を送るにつけ、思う事があります。
ひとりひとりの人間は、それぞれ異なった想いや感情を持って、日々の選択をし、生きています。その個々の差異は思いのほか大きく、他人を理解しようとすることは本当に難しい。それでいて、生きていくためには多くの人と関わり、共同作業を重ねていかなくてはなりません。人と関係を持つことは、どのような生き方をしていても否応もなく求められるでしょう。
不条理とは、<過ごしていかなくてはならない日常>です。そして別役実作品の登場人物たちは、それぞれの形で日常に抗う人々です。この戯曲と別役実氏に抗うことで、日常のちょっとした<ゆかしさ>や<悲哀>を演劇作品として描きたいと思っています。
|
5.7|日|7:00 PM, 5.8|月|7:00 PM
|
激弾ショット
演出=河原小僧 音響=入船千帆美
出演=山田陽平/久保木彩/佐藤英征/廣瀬正仁(トランジスタONE)
「激弾ショット」は、古典戯曲や現代戯曲など、ジャンルにとらわれることなく、小さい空間から演劇を通して、今という時代に発信していきたいと思っております。
shot.gekidan@gmail.com
私達激弾ショットは、過去に数回、別役実さんの作品を上演させて頂いていますが、毎回思うのは、別役実さんの戯曲の凄さです。噛めば噛むほど味が出て、最後は当初の味とは全く違う味が出て来るそんな印象です。
私達は今を生きていて何を与えられ、なにを失ったのか。日本という国が日本であってほしい今も未来も。稽古をしていてそんなふうに思います。
河原 小僧
|
|
劇団820製作所
-「第5回せんがわ演劇コンクール」グランプリ/受賞-
演出=波田野淳紘 出演=佐々木覚/加藤好昭/荒井るり子/城戸啓佑
「820製作所」(はにわせいさくしょ)は04年に旗揚げ、東京圏を活動の拠点として、演劇の公演を重ねてきました。キャッチフレーズは、「本当はそこにあるおとぎ話」。
info@820-haniwa.com
©bozzo
丁寧に、ひっそりと、この世界と他人に震え戦きながら、裸の神経を差しだしている。誤解されることを過剰に怖れ、とめどなく吐きだされる言葉によってみずからを確かめつつ、吹きっさらしの地平に寄る辺なく佇んでいる。
別役実氏の戯曲に描かれる人々の、ある類型として導きだされるのはそのような人物像だ。彼らの抱える恐怖は、もしかすると作家自身のそれかもしれない。もしくは作家の感情移入の対象が、愛さざるを得ない相手が、そういう事情に耐えている人々なのかもしれない。
不条理演劇は、人と人、人と世界のあいだに“虚空”の裂け目が覗いていることを指し示す演劇だ。人と人の間に横たわる乗り越えがたい断絶を露わにし、その亀裂に目を向けることで、日常性とは何であるかを炙りだすものだ。
氏は演劇を“虚空への冒険”とする。この世界がこうして“ある”ことが、何を根拠にして“ある”のか、突き詰めてみればわたしたちに何を言えるだろう。作家の口にする“虚空”は、その無根拠さの別名だろう。
そもそも、なぜその会話がはじまったのかの前提を逸したまま、論理ばかりが空転して紡がれる言葉のやりとりは、とりわけ『正午の伝説』においては、あの戦争の責任の淵源をはっきりとさせないまま、その後の七十年を過ごしてきた日本社会の繁栄と衰退の反映であるように思われる。「天皇のために死ね」という体制から、天皇の人間宣言を経て民主主義の国へ。それがなぜいま教育勅語(天皇のために死ね、忠実な臣民たれ)の学校現場での朗読を文科副大臣が「問題なし」と答弁する国になったのか、事態はまさに氏がとぼけた笑いとともに描きつづけてきた不条理演劇のそれではないか。いったいここはどういう社会だ。
滑稽に、時に酷薄なまでに存在の揺らぎを突きつける氏の劇構造と、それを支えるせりふをわたしは愛する。上演に際しては、“虚空”に対峙する者の“透明な悲しみ”に舞台が満たされることを願う。
820製作所/波田野淳紘
|
|
|
|
|