東京芸術劇場の主催で、9月に「God save the Queen」という企画が行われた。演劇ジャーナリスト・徳永京子のセレクトによる、若手5劇団のショーケース。企画タイトルの和訳「女王陛下万歳」通り、5団体すべての主宰者は女性。当日パンフレットに徳永は、「どうしても多くの人に紹介したい才能」が、図らずも「全員女性」だったと記している。多方面に宣伝がなされ注目を集めた企画であったが、内実は低調なものであった。
このような上辺だけの気分が、ハイアートを巡る今日の状況に蔓延している。その中心にいるのが、東京芸術劇場が建つ池袋だ。今や芸劇は、国内外の最先端の舞台芸術が一同に介する「日本最大の国際舞台芸術祭」=F/T(フェスティバル/トーキョー)の中心的な場所として、ハイアートの殿堂のごとき権威を獲得している。東京都から多額の補助金が投入されているが、それはオリンピック招致の役割も担っていた。その力を背景に、F/Tは巨大なマスへと変貌してはいまいか。そうだとしたら、社会を批判/批評すべき文化が、資本および国家に回収されていることになる。意図不明の「God save the Queen」も、その一種として私には感じられた。