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Von・noズ   
「真髄」



  仰向けで手足を動かす赤ん坊を見て、”まるで踊っているようだ”と、その様子を表現することがあるが、”踊っている”と感じたことを、別の言い方にして伝えることはできるのだろうか?具体的な言葉になり得ない、その曖昧さこそがダンスの力であると私たちは思う。シンプルに[ダンス]という単語に抱く印象は、音に乗る、体を動かす、ステップを踏むなど、大多数の人が想像するであろうダンスと私たちが考えるダンスはなんら変わりない気がする。その上で私たちは、この[ダンス]がどのような形を成していても[ダンス]の感覚を覚えるということを伝えたい。ダンスのスタイルによって見た目が異なっていても、単にそれは[ダンス]の表情の違いなのだと私たちは感じる。

 ダンスってなんだろう?とはじめて疑問に思ったのは大学生の頃、“踊る”ダンスしかしてこなかった私たちが“創る”ダンスと出会ったっことがきっかけであった。作品に向けたクリエーションを行うなかで、“踊ること”への意識が変わり、ダンスに対する価値観も変わっていったように思う。踊りはじめる瞬間から終いまで、無意識になりがちな細かい作業を丁寧に捉え、肉体と精神の両面で答える過程のなかで、それまでの自分達はただ表面的に身体を動かしていただけであったことに気がついた。何故足を踏み出すのか、何故手を前に出すのか、視線はどこを見ているのか…など、疑問を持たないところまで削いでいく行為が、私たちにとっては踊ることと創ることを重ねる第一歩であった。この経験で得た感動は、初めて[ダンス]に触れた時の感動と同じものであったから、ただ躍動的に動くことだけがダンスなのではないと思うようになった。ほんの2ミリの動きにすら意味を持たなければならないと感じた時、自分たちがもつ身体が何をどう捉えているのか、どうやったら体現ができるのかを考えるようになり、ダンスはこんなにも凝縮されて身体から出るものなのだという実感を持った。このそこはかとない魅力について考え続ける限り[ダンス]は形をさまざまに変えて人の心を揺さぶるものなのではないかと感じている。

 例えば切ない気持ちになった時、”胸がぎゅうっとなる”という表現をすることがある。その感情が起きている身体に対して、その言葉が一番しっくり来ているとは限らない。きっと身体でしかわからないことや身体でしか伝えられないことは存在する。身体でしかわからない音を聞き、人に届ける。声や言葉を超えて動きで...私たちは、何ごとにも代え難い動きを見せること、それがダンスの役割だと思っている。私たちは一度この場に触れた責任がある。踊り続ける者達が踊り創るこの先を開いていきたい。





Von・noズ
日本大学芸術学部演劇学科洋舞コース出身の上村有紀と久保佳絵で2014年に結成。 主な振付・構成・演出を上村有紀が行う。ダンスで心の機微を描くことを大切にし、振付やシーンを緻密に組み立てることにこだわりを持つダンスカンパニー。表面からは知りにくい隠された感情や姿に焦点を当て、日常に潜むひずみを捉えるダンス作品の在り方を模索中。
次回公演
ダンスショーケース『吉祥寺ダンスリライトvol.1』
2019年11月15日(金)~17日(日)@吉祥寺シアター