私達は現在、目に視えぬ情念や衝動の具象化にこだわり、ダンスなどの身体動作を取り入れ、その身体に見合った発語として抑揚の強い科白廻しを採用、人々や社会の闇を歪曲・増幅させた、位相のズレた世界の構築を試みている。いわゆるアンリアリズム型演劇である。他人に言わせれば私達の作品はエンタメ要素もあるが、どちらかといえばアート寄りの作風らしく、昔はなにかと実験的だとか前衛的だとか言われたものである。おそらく彼らは、理解不能・荒々しいという意味でその言葉を持ち出していたのだろう。だがそれは大きな間違いだ。理解不能なのではなく少々難解に思えるだけ。荒々しいのではなく破天荒。今まで誰もなし得なかったことに挑戦しているのである。そう、前衛の精神とは、既存の枠組みに異を唱え、新たな表現を追求することだ。とはいえ、私達自体大したことはやっていない。私達がやったことなど既に先人がやっているし、同時に前衛の人は未だ前衛であり続けているだろう。私はその精神に敬意を表する。だからこそ自分達にとって少しでも新たなことに挑戦していこうと心掛けている。
 2004年に発足した劇団は10年目に突入する。2012年は富山(利賀村)だけでなく、千葉(新鎌ヶ谷)、宮城(仙台)で作品を発表することとなった。劇団名はING進行形。名の由来はとにかく進んで行こうという志。これからも創作活動を通して様々な地に赴こうと考えている。


©Setsuko Hara

ラディーー1984年1月30日生。東京工業大学工学部附属工業高等学校建築科を経て、日本大学藝術学部文芸学科へ。大学3年次、劇団ING進行形を発足、代表・演出を務める。Alice Festivalなどに招聘される。
http://ing.nobody.jp

■「戦場のピクニック」FESTIVAL
5月5日(日・祝)~6日(月・祝)@日暮里d-倉庫(東京)